アプリで自動車を手配するなら白人の名前を使うと便利だ。
新たな研究によって、アフリカ系アメリカ人の名前の乗客は、白人の名前の乗客に比べて、乗車リクエストが受理されるまでに長い時間待たされたり、乗車がキャンセルされたりする可能性が高いことが明らかになった。研究結果は、全米経済研究所発行の報告書に掲載されている。
マサチューセッツ工科大学(MIT)、スタンフォード大学、ワシントン大学の研究者は、約1500人の乗客を対象とした調査で、シアトルとボストンの決められたルートを観察した。
シアトルでの実験結果では、アフリカ系アメリカ人の名前の乗客は、乗車リクエストが受理されるまでにウーバーで29秒、リフトで23秒かかった。これに比べて、白人の名前の乗客の待ち時間はウーバーで21秒、リフトで19秒だった。
ボストンでの実験結果では、ウーバーに別の問題があった。アフリカ系アメリカ人の名前の乗客は、10.1%の確率で乗車リクエストがキャンセルされたのに対し、白人の名前の乗客はたった4.9%のキャンセル率だった。またリフトでは、ウーバーは逆にアフリカ系アメリカ人の名前の乗客の方が白人の名前の乗客よりもわずかにキャンセル率が低かった。
オンライン市場の経済学を研究するハーバード・ビジネス・スクールのベン・エデルマン准教授(この研究には参加していない)は、MITテクノロジーレビューの取材に対して、「研究は適切かつ厳密な方法論に基づいていますが、悩ましい結論です」という。
誤解のないようにいえば、研究者が見いだしたのは配車サービスに限った問題ではない。たとえばシアトルで実施された路上で直接タクシーを拾う実験では、白人の利用者が最初に通りかかったタクシーを拾う確率は60%だった。一方で、黒人の利用者が最初に通りかかったタクシーを拾う確率は20%だった。
リフトの政策コミュニケーション担当、エイドリアン・ダービンは、「リフトが有色系のコミュニティーによい影響を与えていることを非常に誇りに思います。いかなる形での差別も許されません」と述べた。ウーバーは、当原稿の執筆中にコメントを要請したが、応じなかった。
もちろん、人種による不公平は、複雑で古くから根付いた社会問題であり、ウーバーやリフトだけに責任を負わせられない。しかし、問題の一端が、乗車前にドライバーに伝えられる情報によって、乗客が受けるサービスに明らかな影響があることにあるのは間違いない。研究者は、たとえば、ドライバーの厳格な審査や、乗車キャンセルをさせない機能、乗車前に名前を入力する機会を少なくする工夫など、配車サービスを提供する企業が問題解決のためにさまざまなアプローチを取れるのではないかと提案する。
これと似たような取り組みは、エア・ビー・アンド・ビーにも取り入れられるべきだと研究者が提案している。エデルマン准教授が過去に明らかにしたように、エア・ビー・アンド・ビーも差別の問題に取り組んでいる。しかし、誰でも事業者になれるようなサービスは、信頼を築き、より効率のよいサービスを開発する手段として(常にそうとは限らないが)、情報を共有することで成り立っている。一部の顧客情報を共有しにくくする改革は、エア・ビー・アンド・ビーやウーバー、リフトにとって、確かに踏み出しにくい領域だ。
それでも、踏み出す必要はある。エデルマン准教授は「ウーバーやリフト、私の調査で判明したエア・ビー・アンド・ビーの調査結果からわかるのは、プラットフォームが、サービス提供者に差別を促すように設計されていることです。消費者や政府機関は、このようなシステム環境が変わるように、もっと要求を伝えるべきです」という。
(関連記事:Bloomberg, National Bureau of Economic Research, “Airbnb Isn’t Really Confronting Its Racism Problem,” “This Is How Americans Really Feel About Uber and Lyft,” “Does Uber Have a Sexual Assault Problem?”)