テスラのソーラー・ルーフは『デスパレートな妻たち』並みに現実感がない
持続可能エネルギー

Tesla’s Solar Roof Story: So Far, So Superficial テスラのソーラー・ルーフは『デスパレートな妻たち』並みに現実感がない

『デスパレートな妻たち』で撮影セットで開催されたソーラー・ルーフのお披露目会は、説得力に欠けるナレーション付きだった。 by Jamie Condliffe2016.11.01

テスラの最新型ソーラー・ルーフ(ソーラーパネル付き屋根瓦)テクノロジーの発表会に選ばれたのは、テレビ番組『デスパレートな妻たち』に出てくる「ウィステリア通り」だ。ソーラーパネルの新商品は今のところリアリティに欠けており、ロサンゼルスのユニバーサルスタジオ内のセットで発表したテスラの選択は、適切だったかもしれない。

電気自動車会社テスラとソーラーエネルギーの設置を手がけるソーラーシティを経営しているのだから、イーロン・マスクCEOがあらゆる領域でオール電化を目指しているのは、隠すまでもない。しかし、有名な通りで開催された発表イベントに登場したマスクCEOは、自らが思い描く未来を実現させるには、ソーラーパネルとエネルギー貯蔵(蓄電)、電気自動車のすべてが美しく、手頃な値段で、違和感なく取り入れられる必要があると説明した。

テスラの新製品の明るい未来を語るイーロン・マスクCEO

マスクCEOの新たなソーラー・ルーフは、今のところ自社が掲げるこの3つの目標の、最初の段階を達成できなさそうだ。テスラが開発したソーラー・ルーフは石英製で、ひとつひとつが一般的に見かける屋根瓦に似せて作られている。テスラが考えているのは、屋根全体の表面部分を発電式に変えつつも、なじみのある外観を保つことだ。Vergeで公開されている竣工イメージは、確かに非常によい出来栄えだ。現段階で、ソーラー・ルーフには4種類のデザインがあり、素朴なデザインの「トスカーナ・テラコッタ・タイル」のほか、「スムーズ・タイル」、「モダン・スレート・タイル」などがあり、どの見栄えも非常によい。

発電の仕掛けは、見た目からもわかるように表面のコーティング部分にある。3Mと共同で開発されたコーティングは、ソーラー・ルーフの上面の一定の方向からの日光は通過させるが、別の方向から見ると不透明になる。歩道から見上げると般的なタイルの見た目と変わりないが、空から降り注ぐ日光は、ソーラー・ルーフを直射し、太陽電池部分まで通過する。間違いなく、スマートな仕掛けだ。

ところが、発表イベントで製品の詳細はあまり語られなかった。Wiredが書いているとおり、マスクCEOは販売価格、性能、商品の在庫や設置方法といった部分を説明しなかったのだ。

どれも、ソーラー・ルーフの導入に大きく影響する要素であり、見た目の美しさ以上に重要だ。というわけで、少なくとも現段階では、ソーラー・ルーフの販売見込みは立てられない。テスラほど魅力的なデザインの商品ではなかったが、つい最近ソーラー・ルーフの販売に失敗した企業がある。ダウ・ケミカルは今年初め、事業を打ち切った。

発表イベントで強調された納得のいく部分といえば、テスラとソーラーシティの友好的な関係だ。マスクCEOが狙っているのはソーラーシティを買収し、2社の合併によって商品展開の議論を効率よく進めることだ。2社の合併には懐疑的な意見も多いが、テスラがソーラー・ルーフのコンセプトを発表したことで、2社の境界線は今まで以上に曖昧になっている。

『デスパレートな妻たち』であれば、嫉妬深い第三者が登場する状況だ。それでも今のところ、このままのあらすじで進行するようだ。

(関連記事:Reuters, Wired, the Verge, TechCrunch, “Why Tesla Wants to Sell a Battery for Your Home,” “Elon Musk’s House of Gigacards,” “Elon Musk’s Bonkers Plan to Join Tesla and SolarCity”)