光子版「ニュートンのゆりかご」、生命のエネルギー伝達の謎解明へ
中国の研究チームが、光子を使った量子スケールの「ニュートンのゆりかご」を作成した。このゆりかごは、ノイズを混ぜることでエネルギー伝達効率が向上するという不思議な性質を持っており、光合成や臭いの検出など生命体におけるエネルギー伝達の仕組みを解明するのに役立つと見られている。 by Emerging Technology from the arXiv2019.05.03
エネルギー保存と運動量保存の法則を実演するのによく使用されるのは、一連の球が互いに接するように吊るされた「ニュートンのゆりかご」という装置だ。現在よく見られるような装置はおそらく1960年代に考案され、その後オフィス・トイとして販売されることになった。とはいえ、ニュートンをはじめとする17世紀の学者たちは、すでにその背後にある物理学に精通していた。
エネルギー保存則と運動量保存則は普遍的な法則であり、宇宙論的なスケールでも人間のスケールでも同じように成立する。また、これらの法則は、原子や亜原子粒子のスケールにおいても適用できるが、この場合は奇妙な量子力学の法則の影響を受けることになる。
ここで興味深い疑問が生じる。光子などの亜原子粒子を用いて、量子スケールのニュートンのゆりかごを作ることは可能なのだろうか。
中国の上海交通大学のジェン・フェンと同僚らによる研究により、1つの答えが得られている。ジェンらの物理学者から成る研究チームは、光子を用いてニュートンのゆりかごを作成した。同研究チームによると、この装置に関与する物理現象が、光合成や匂いの検出などの十分に理解されていない自然界のさまざまなエネルギー伝達過程を解明するのに役立つ可能性があるという。
ニュートンのゆりかごは、単純な装置だ。まず、一連の球を接触させて吊るしておき、一方の端の1つの球を引き上げて離す。この最初の球が隣の球に衝突すると、最初の球のエネルギーと運動量が次の球に移動する。すると、2つ目の球もそのエネルギーと運動量を次の球に伝える。このようにエネルギーと運動量が列の中間の球を伝わっていった後、逆側の最後の球が飛んでいく。飛んでいった球が弧を描いて元の位置に戻ると、今度 …
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