2016年末までに自動車用の後付け自律システムを販売しようとしていたスタートアップ企業コンマAI(Comma.ai)が、米国国家道路交通安全局(NHTSA)の圧力により初の製品の販売中止に追い込まれた。
コンマAI創業者のジョージ・ホッツは規制当局から受け取った書簡を公表した。書簡の中で、米国国家道路交通安全局(NHTSA)のポール・ヘマスバウ首席法律顧問は、「NHTSAは、貴社の製品が顧客と他の道路使用者の安全を脅かすことを懸念しています」と説明し、全ての自動車に適用される安全基準にコンマAI製の装置が準拠している証拠を提供するように要求した。
問題の製品は999ドルの「コンマ・ワン」で、改造装置である点で、他の数多くの自律運転システムと異なる。小さな筐体にはカメラセンサーがあるだけで、道路で何が起きているかなどの追加データはレーダーシステム(現状ではインテリジェント型の運転制御システムの補助用に高級車種に搭載されている)を横取りして得る。ホッツは、システムの機能面ではテスラの「オートパイロット」に匹敵するという。
当然といえば当然だが、NHTSAは車に設置された装置がどう動作するかを心配している。「貴社製品の設置は、自動車の安全システムの性能をに悪い影響を与えたり、自動車を危険にさらしたりする可能性があります」とヘマスバウ首席法律顧問は書簡で述べた。
さらにNHTSAはコンマAIの「システムは運転上のいかなる義務についてもドライバーを免責するものではない」との立場(ブログで記述)も問題視している。ヘマスバウ首席法律顧問は、オートパイロット機能を使用中のテスラのドライバーが関わった今年前半の死亡事故をおそらく念頭に、ドライバーが「意図された目的を超える度合いで」装置を使う「蓋然性が高い」と指摘する。
テスラはドライバーが自動車のハンドルから長く手を離し過ぎるとシステムを自動的に無効化するようにオートパイロットシステムをアップグレードした。他の自動車メーカーも同様の機能で対応している。
しかし、コンマAIはNHTSAの基準を満たすのではなく、装置を打ち切ることについて、以下のようにツイッターで発表した。
The comma one is cancelled. comma.ai will be exploring other products and markets. Hello from Shenzhen, China. -GH 3/3
— comma ai (@comma_ai) October 28, 2016
「コンマ・ワン」を中止することにした。コンマAIが今後探求することになるのは、他の製品と分野だ。中国のシンセンより。
Would much rather spend my life building amazing tech than dealing with regulators and lawyers. It isn't worth it. -GH 2/3
— comma ai (@comma_ai) October 28, 2016
人生の時間を費やしたいのはすごいテクノロジーを作ることであって、規制当局や弁護士に対処することではない。そんなのはくだらないことだ。
ホッツは以前、装置の制約を認めていた。あくまでもドライバーの運転を補助するシステムとして設計したのであって、パッケージ化された自律システムではない、と明らかにしていた。しかしホッツは、後付けする自動車にすでに搭載されている同種のテクノロジーのアップグレードとして機能するからコンマ・ワンは「合法であるはずだ」と断言していたが、実際には間違っていたのだ。
アドオン型の自動運転キットを開発しているのはコンマAIだけではない。中止のニュースは、他の企業も関心を持って注目しているはずだ。デルファイやモービルアイ、オックスボティカも、自動車を自律化する後付け運転システムを開発している。NHTSAはこうした企業の装置から目を離さないことは間違いないが、こうした企業はすでに自動車産業と密接に事業を進めている。コンマAIは手にできなかった有利な条件があるのだ。
(関連記事:Scribd, “This Box Could Make Your Car Autonomous for Just $1,000,” “Plug-and-Play Autonomy Could Soon Turn Your Car Into a Self-Driving Robot,” “Tesla Crash Will Shape the Future of Automated Cars”)