米国版「虚構新聞」で分かった、ウケる見出しの共通パターン
ユーモアが認知心理学者の研究対象になるのであれば、人工知能(AI)を利用してユーモアを作り出せるかもしれない。そう考えたスイス連邦工科大学と米マイクロソフトの研究者らは、クラウドソーシングを使って、風刺新聞の面白い見出しをまじめな見出しに変えたデータベースを構築し、ユーモアの源泉がどこにあるのかを探った。 by Emerging Technology from the arXiv2019.01.29
ユーモアは人間に本来備わっているものの一部であるように思われる。微笑む、笑う、忍び笑いをもらすといった能力は、社会環境の中で重要な役割を果たしており、社会学者と人類学者の関心の的になっている。ただ、笑いは必ずジョークを「受け取った」後に起こるものであるので、ユーモアは認知心理学者の興味の対象でもある。
そう考えると、人工知能(AI)の活躍の場となる可能性がにわかに浮上する。そこでコンピューター科学者は、ユーモアを計算で求められるかどうか、そしてもし可能だとすれば、どうすればよいのかを問い始めた。
しかし、答えを出そうとする試みはどれも、すぐさま問題にぶち当たる。その問題とは、コンピューターを使ったユーモアの研究に使える適切なデータベースがないことである。たとえば、よく似ている文章だが、一方には面白いものを、もう一方には面白くないものを集めたデータベースがあれば、研究者は両者の違いを紐解き、一方を他方に変換する方法の研究に取りかかれるだろう。ただ悲しいことに、そんなデータベースは存在しなかった。
ここでスイス連邦工科大学ローザンヌ校のロバート・ウェスト助教授と米マイクロソフト・リサーチのエリック・ホロヴィッツ博士の登場だ。風刺ニュースの見出しはたいてい面白いものだ。ウェスト助教授らはそれらの見出しを使って、クラウドソーシングで、よく似ているが面白くない文章のデータベースを作成した。
これらの文章の違いを研究すれば、研究者は面白いものと面白くないものの区別がどのように生まれるのかを見極め、ユーモアの源泉がどこにあるのかを探れるはずだ。「文章が真面目になるか面白くなるかの違いを生む言葉を正確に特定できれば、風刺文が面白い理由をこれまでより精密な粒度で理解できるでしょう」とウェスト助教授らは語る。彼らの研究の結果は、ユーモアの性質に関する独自の洞察になった。
ウェスト助教授らはデータベースを作成するため「Unfun.me」というオンラインゲームのサイトを制作した。プレイヤーは、『ジ・オニオン(the Onion:米国の風刺報道サイト、日本でいう「虚構新聞」)』に掲載された風刺ニュースの見出しを与えられ、できるだけ少ない単語 …
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