面倒なプライバシー問題に対処してからでないと、ドローンは空から荷物を玄関先に降ろせないかもしれない。
約25kg以下の無人飛行機の商用利用に関する米国連邦航空局(FAA)の新規則は、ドローンの巨大産業化に扉を開いた。アメリカでは配達ドローンはまだ実用化・合法化されていないが、その他の用途のほうが経済規模としてはずっと大きい。最初に目にするのは、不動産調査や、屋根・高所の橋、携帯電話の基地局、送電線、風力タービンなどのインフラ検査用ドローンになるだろう。
しかしドローンという新しい現実は、プライバシー擁護派をおびえさせる。低コストの機体とセンサーが、絶えず空から監視するテクノロジーの普及に拍車をかけ、現行のプライバシー関連法規の隙をつく脱法行為がまかり通るかもしれない。ドローンが関わるプライバシー問題の責任を、どの政府機関が負うのかも不明だ。FAAは法律の制定を拒み、米国連邦取引委員会(FTC、米国で消費者のプライバシーを守るおもな機関)は、問題を調査中の段階だ。いくつかの州法が空白を埋めようと制定されたが、全体としては一貫性がなく、詳細は誰にもわからない。
まず、土地の上空は誰が所有するのか。近代航空学の出現以来、米国では一般的に約150メートル上空までは土地所有者の権利が及ぶ。アリゾナ州立大学法学部のトロイ・ルール教授によれば、それ以上の高さは「空中交通のための一般道」のようなものだ、という。しかし小型で低空飛行するドローン …