オバマ米大統領のトップ経済アドバイザー、大統領経済諮問委員会のジェイソン・ファーマン委員長はロボットが人間の仕事を奪うことはないと考えている。人工知能に関するファーマン委員長の最大の心配事は、現在のところ、人工知能が十分に進化していないことだ。
人工知能の未来についての議論は、経済学者を二分させている。これまでと同じことが続くと見る学者もいる。つまり、新しいテクノロジーが出現し、ビジネスのやり方が変わるが、結局は経済が順応すると見る。一方で、人工知能は経済のルールを変え、ロボットが人間から仕事を奪い、大規模な失業と不平等が生まれると見る学者もいる。ファーマン委員長は10月26日、ワシントンD.C.のテクノロジー会議で「私は確実に結局は経済が順応する派の考えだ」と述べた。
米国と他の先進諸国では、生産性の伸びが停滞している。また、主要な層の労働力が縮小している。特に25~54歳の男性で顕著だ。それでも、ファーマン委員長は新しいテクノロジーが前例のない失業と不平等を生み出すとは考えていない。
人々は長い間、機械が仕事を奪うのではないかと心配してきた。しかし、ファーマン委員長は、これまで通りだという。つまり、実際には、機械は人々を豊かにする。そして、豊かになった人々がより多くの金を使うのだ。機械が取って代わる仕事も確かにあるが、同時に新しい仕事も生まれ、商品やサービスを供給し、人々は余った金でそれらを買いたがる。「今回だけこれまでと違う理由が見つからない」とファーマン委員長は述べた。
とはいえ、人工知能の成長により、これまでにない課題が生じないとは限らない。政府が公正で安全なやり方で、確実に社会にとって利益を実現する重要な役割を担う必要がある、とファーマン委員長はいう。高い技能を必要としない労働者は特に、ロボットに仕事を奪われるかもしれない。あるいは、司法当局の偏ったアルゴリズムのように、不正な結果を招く可能性もある。
しかし、こうした問題は世界的なベーシックインカム導入のような、新しい経済的解決法を必要とはしない、とファーマン委員長はいう。そうではなく、ファーマン委員長が最も危機感を抱いているのは、人類にはさらに多くの人工知能が必要になることだ。人工知能は経済のほんのわずかな部分でのみ変革をもたらす。人工知能にはもっと重要な役割があり、それは基本的な研究と開発に委ねられているという。政府がこれまでにない立場でそう支援しなければならない。