非現実的な「グリーン・ニューディール」には科学的な視点が必要だ
米民主党が掲げた包括的な環境政策である「グリーン・ニューディール」政策を巡って世界的な環境団体が団結を強めている。だが、さまざまな思惑が交錯し、科学的な視点が欠落した提言の実現性は乏しい。 by James Temple2019.01.21
グリーン・ニューディールの展望はいまや米国政治を活性化させる力となり、気候変動活動家を鼓舞し、連邦政府の広範な気候計画の裏付けとなる圧力を加えつつある。
しかし、環境と経済を扱うこの政策パッケージには、関心の高い集団が崇高な理念を基本的な政策に転換することを模索しており、当初から技術的な欠陥が含まれていたことがくっきりと浮かび上がってきている。特に、冒頭の文言では「国内の電力需要を100%再生可能エネルギー源」で賄うという目標が掲げられているが、これを一般的に解釈すれば、原子力や気候に影響するような排出物を捕獲できる装置を備えた化石燃料発電所などの無炭素エネルギー源は除かれることになる。
米議会に先週送られた書簡において、600以上の環境団体が再生可能エネルギーの定義をより狭めることを求め、さらに最終案ではバイオマスや大規模な水力発電も禁止するべきだとしている。また、国際環境NGOの350オルグ(350.ORG)や地球の友(FoE)、グリーンピース(Greenpeace)非営利団体の生物多様性センター(Center for Biological Diversity)といった団体が、炭素税やキャップ&トレード・プログラムといった市場ベースのメカニズムを促進するいかなる気候法案にも反対していく、とも綴られている。
※日本語版注:キャップ&トレード(cap-and-trade)は政府が温室効果ガスの総排出量を決定し、企業などに排出枠を配分し、排出枠の一部の移転または収得を認める制度。
つまり、米国全体のエネルギーを風力や太陽光、それにおそらく幾分かの地熱発電で賄うことを意味する。
だがこれは気候変動の脅威を抑えるために必要な低炭素または無炭素のエネルギー・システムを早期に、また無理なく達成するための戦略としては不合理だ。最近の研究で判明したことを総合すると、原子力や二酸化炭素の貯留、水力発電は不可欠なものであり、炭素価格制度は変革を推進するもっとも強力なツールの1つとなり得るからだ。
環境団体の書簡では、1.5℃の気温上昇を防ぐための早期かつ積極的な動きを呼びかけた、国連気候パネルの最新報告が引用されている。しかし、それを実現する方法に関する気候パネルの知見については触れていない。昨年10月に公表され …
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