量子コンピューターのリアル
不足する専用部品に商機あり
量子コンピューターはコンピューティングの進歩に次なる大きな飛躍をもたらすと期待されている。その一方で、研究者たちは製造に必要な一部の希少な部品を手に入れるのに苦労しており、部品調達の困難さが量子コンピューターの進歩の足かせとなっている可能性がある。 by Martin Giles2019.01.25
ブレイク・ジョンソンは、超伝導ケーブルや超低温冷却装置について考えることに多くの時間を費やしている。量子コンピューター製造のスタートアップであるリゲッティ・コンピューティング(Rigetti Computing)の量子エンジニアリング担当副社長を務めるジョンソンは、機械の組み立てに必要な部品の発見や調達の責任者なのだ。
ジョンソン副社長の仕事は困難になってきている。なぜなら、かつては難解で実験的だった量子コンピューターのテクノロジーが、リゲッティやアイオンQ(IonQ)といった野心的なスタートアップに加えて、IBMやグーグル、中国のアリババをはじめとする大企業が推進する主流分野へと変貌を遂げつつあるからだ。その結果、重要な部品に対する需要が、供給を大きく上回る速さで増大している。
たとえば、量子コンピューターの処理能力の重要な鍵を握る量子ビット(キュービット)の生成に有効で、外宇宙よりも低い温度を作り出せる希釈冷却器を入手するには、数カ月、あるいは1年以上かかる。ジョンソン副社長によると、もう1つのネックはキュービットを制御するマイクロ波信号を伝えるのに必要な特別製ケーブルだという。
一部の部品の調達に長い時間を要することが、この分野の進歩を妨げている。「このことによって、量子コンピューターの研究に並行して取り組んでいるチームの進捗が遅れています」と、カリフォルニア大学バークレー校のアーファン・シディキー教授は話す。
珍しいテクノロジー
こうした問題を引き起こしている大きな理由の1つは、量子コンピューターには従来のコンピューター用に開発されたインフラの大半が使えないことにある。「量子コンピューターは新奇な原理に基づいています。それはつまり非常に珍しいハードウェアを使用することを意味します」と、メリーランド大学教授でもある、アイオンQのクリス・モンローCEO(最高経営責任者 …
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