ロサンゼルス生物医学研究所の遺伝学者ケント・タイラー研究員が2年前、ヒスパニック系母集団における2型糖尿病の遺伝的危険因子について研究する助成金のための書類を書こうとした時、他の研究がほとんどないことに気付いた。タイラー研究員はゲノムワイド関連解析(GWAS)カタログと呼ばれる、ゲノムワイド関連解析に関する研究の全ての国際的出版物を調べたところ、ヨーロッパ人の2型糖尿病では19件の研究、アジア人では14件の研究、ヒスパニック人では3件の研究、メキシコ人では1件の研究、そしてアリゾナ州のアメリカ先住民グループでは1件の研究があった。
GWASは、多くの人のデオキシリボ核酸(DNA)をスキャンし、病気の誘発と関連する遺伝子変異体を検出する。しかしアフリカ系、ラテンアメリカ系、原住民や先住民の人びとを含む多くの母集団に関する遺伝的危険因子の研究や、ゲノミクス研究全般は、非常に少数しかない。情報がないため、研究者は異なる母集団での病気の感染性や薬物反応に関与している重要な遺伝因子を見逃している可能性があるのだ。
タイラー研究員は、GWASは現代の遺伝学の最重要ツールだが、私たちはまだそのツールを完成することから「ほど遠い」という。タイラー研究員は、異なる母集団で病気を研究するために使える「基本的なゲノムインフラ」を設立するには、もっと多様な遺伝子が必要だという。
最近、ネイチャー誌に発表された分析により、ゲノムワイド関連解析に参加した81%の人がヨーロッパ系だったことが判明した。アフリカ系、ラテンアメリカ系、原住民や先住民の家系にルーツがある人は、全て合わせても分析された全ゲノミクス試料の4%にも満たない。ゲノムワイド関連解析の全体的な多様性は、2009年から増加してはいるものの、96%のデータがヨーロッパ系であり、多様性の増加は、アジア系母集団のデータの大幅な増加と、その他の母集団のごくわずかでしかない増加による。
米国立ヒトゲノム研究所のゲノミクスと世界保健研究(米国立 …