政府がインターネットのアプリやサービスを遮断すると、その国の経済に損失があることが、新しい分析により明らかになった。
各国のオンライン活動の中断が招くコストを予測したブルッキングス研究所のダレル・ウェスト部長の調査によると、昨年度は、19カ国で81件のネット接続の分断があり、少なくとも24億ドルの損益があった。
各国政府は、反対意見を封じ込めたり、ある会社を法制度に服従させるといったさまざまな理由で、自国のインターネット接続を遮断する。2011年、エジプト政府はインターネット接続を5日間遮断し、反政府派同士の通信を妨害した。ブラジル政府は2016年5月、ユーザーデータの提出を拒絶したメッセージングアプリWhatsAppの通信を遮断した。
経済活動は従来よりずっとインターネットに依存しており、このような中断は「非常に逆効果です」とウェスト部長はいう。
国家レベルの遮断による経済的損失額を算出するために、ウェスト部長は、ボストン・コンサルティング・グループによるある国のGDPのうち、インターネット経済が締める割合の研究を参考にした。研究によると、もっともインターネット化が進んでいる英国は12.4%、日本は5.6%、もっとも進んでいないインドネシアは1.4%で各国各様だ。ウェスト部長は、世界銀行の加入者データを使って、携帯ネットワークを遮断する費用を見積もり、マサチューセッツ工科大学の経済学者による最近の研究結果により、個別のデジタルアプリの価値を算出した。ウェスト部長のモデルは、インターネットがもたらす雇用数を割り出そうとした最近の研究も基になっている。
ただし、発展途上国ではデータを収集しにくく、この研究結果は確固とはいえない。それでも、電子商取引は急成長しており、「24億ドルの損益」は少なめの見積もりだとウェスト部長はいう。
モバイルマネーへの依存度が高いアフリカ諸国などでは、特に問題は深刻だ。経済コストの分析があまりされていないため、国の指導者は、インターネットが使えなくなることの経済損失が頭にないかもしれない、とウェスト部長はいう。しかし、インターネットを遮断している政府は「国の経済に自ら災いを招いています」とウェスト部長はいう。