KADOKAWA Technology Review
×
深刻化する宇宙空間の環境問題、新たな学問分野を天文学者が提唱
Nasa
ニュース Insider Online限定
We are starting to wreck the environment around our planet now, too

深刻化する宇宙空間の環境問題、新たな学問分野を天文学者が提唱

人類が環境へ及ぼす影響は、地球を遠く離れた場所にまで及んでいる。地球近傍の宇宙空間における人類の活動がその環境にもたらす影響について、真剣に考えるべき時期が来たと訴える科学者がいる。 by Emerging Technology from the arXiv2019.04.09

エコロジー(生態学)は生物と環境の関わり合いについての研究だ。人間にとって、生態学は複雑な学問となる。人類はこれまでに地球の環境を変えてきたが、どのように変えてきたかについては盛んに研究されている一方で、わかっていることは少ない。しかし、人類の影響は、より遠くに及んでいることがますますわかってきている。

過去50年ほどの間に、人類は地球近傍の宇宙空間、すなわち地球から約100万キロメートルの範囲の宇宙空間を探査し始めた。この活動は環境を変えてきている。地球近傍の宇宙空間にはデブリ(人工衛星の破片などの宇宙空間に浮遊するゴミ)が集積しつつあり、それらは放射性元素で汚染されていたり、電磁放射にさらされたりしている。そして今日、アルメニアにあるビュラカン天文台のエレナ・ニコホシアン博士が、新たに興りつつある科学分野である「地球近傍の生態学」が扱わねばならない要素について概説している。

地球近傍の手つかずの環境は、太陽からのエネルギーが充ち満ちている。地球の大気はそのエネルギーを吸収している。特に吸収されやすいのは水や二酸化炭素、酸素などの分子に対応した波長のエネルギーだ。事実、オゾンは200ナノメートルから320ナノメートルの波長の電磁波、いわゆる紫外線B放射を全て吸収している。

地球から遠ざかるにつれて大気そのものの性質が劇的に変化する。大気の質量の約90%は、地表からわずか12キロメートルの対流圏に存在する。ここは大気の密度が一番高い場所でもあり、1立方センチメートルあたり約1019個の粒子が存在する。

高度が上がると大気の密度は劇的に下がっていく。地表から30キロメートルから1000キロメートルの範囲は電離層だが、上空100キロメートルの大気中の粒子数は1立方センチメートルあたり約1013個であるのに対し、上空300キロメートルでは109個にまで下がる。

これほど密度が低くなっても、大気の粒子は地球を守る上で重要な役割を果たしている。地球には絶えず塵や岩が降り注いでいるが、それらは電離層に入ると減速して燃え尽きるのだ。

明らかになっているのは、地球近傍の宇宙空間は活気のある動的な環境であり、複雑なプロセスが多種多様に存在しているということである。人間はそれに影響を及ぼし始めている。

地球近傍の宇宙 …

こちらは有料会員限定の記事です。
有料会員になると制限なしにご利用いただけます。
有料会員にはメリットがいっぱい!
  1. 毎月120本以上更新されるオリジナル記事で、人工知能から遺伝子療法まで、先端テクノロジーの最新動向がわかる。
  2. オリジナル記事をテーマ別に再構成したPDFファイル「eムック」を毎月配信。
    重要テーマが押さえられる。
  3. 各分野のキーパーソンを招いたトークイベント、関連セミナーに優待価格でご招待。
人気の記事ランキング
  1. The winners of Innovators under 35 Japan 2024 have been announced MITTRが選ぶ、 日本発U35イノベーター 2024年版
  2. Kids are learning how to make their own little language models 作って学ぶ生成AIモデルの仕組み、MITが子ども向け新アプリ
  3. The race to find new materials with AI needs more data. Meta is giving massive amounts away for free. メタ、材料科学向けの最大規模のデータセットとAIモデルを無償公開
日本発「世界を変える」U35イノベーター

MITテクノロジーレビューが20年以上にわたって開催しているグローバル・アワード「Innovators Under 35 」。2024年受賞者決定!授賞式を11/20に開催します。チケット販売中。 世界的な課題解決に取り組み、向こう数十年間の未来を形作る若きイノベーターの発掘を目的とするアワードの日本版の最新情報を随時発信中。

特集ページへ
MITTRが選んだ 世界を変える10大技術 2024年版

「ブレークスルー・テクノロジー10」は、人工知能、生物工学、気候変動、コンピューティングなどの分野における重要な技術的進歩を評価するMITテクノロジーレビューの年次企画だ。2024年に注目すべき10のテクノロジーを紹介しよう。

特集ページへ
フォローしてください重要なテクノロジーとイノベーションのニュースをSNSやメールで受け取る