有効ながんの治療法として、がん細胞を低電圧の交流で印加して攻撃する方法が浮上している。カルシウムイオンとカリウムイオンの細胞内外への流れという重要なプロセスを妨げることで、がん細胞を死に至らしめる方法だ。
このアプローチの問題は、がん細胞だけでなく、健康な細胞もイオン・チャンネルの妨害を同様に受けて死んでしまうことだ。そのため、健康な細胞に影響を与えず、がん細胞だけを標的にする方法を見つけなくてはならない。
イタリア工科大学のアッティロ・マリノとトリノ工科大学のエンリコ・アルミチらは、この問題の解決策として、超音波で繰り返し圧縮されると体内に電流を発生させる圧電効果のあるナノ粒子を用いる手法を発表した。そして、この手法が効果的ながん治療につながる可能性があるとする最初のエビデンスを集めた。
マリノらの手法は、理論上は簡単だ。圧電効果のある材料は、圧迫されると電荷を発生し、電圧をかけると形状を変えるため、マイクロフォンからモーターまであらゆる分野で広く使用されている。
彼らのアイデアは、生体適合性のあるナノ粒子を体内に注入し、それに超音波を当てるというものだ。超音波の低圧と高圧を加えることでナノ粒子に電荷が発生し、イオン・チャネルを妨害し、細胞を殺せるはずだと考えた。実験では、鉛を含有しないことから生体適合性があるとされるチタン酸バリウムのナノ粒子を選んだ。 …