2018年に3Dプリンターで製造された「驚きのプロダクト」5+1
2018年は3Dプリンターの活用がさらに広がる1年となった。歩道橋から自動車部品に至るまで、2018年に3Dプリントで作られた「傑作」を紹介しよう。 by Erin Winick2018.12.27
以前に比べれば大げさに喧伝されることは少なくなったかもしれないが、3Dプリントは2018年も産業界に変化をもたらした。製造業企業による軽量化や費用削減などに3Dプリント技術を活用する動きに加え、建築家らが3Dプリントの芸術的限界を押し拡げるいくつかの実験を実施したことは興味深い。
2018年に発表された優れた成果や傑作を紹介しよう。
3Dプリンターで作った鋼鉄の橋
2018年のオランダ・デザイン・ウイーク(Dutch Design Week)で発表されたMX3D(オランダの3Dプリント建設企業)の3Dプリンターで作った歩道橋が、2019年にアムステルダムに設置される予定だ。プロジェクトはほぼ4年がかりとなったが、ニュースサイトの3Dersによると製造は6カ月以内に完了する見通しだという。運河に架けられるこの歩道橋は全長12メートル。当初は現地に設置した3Dプリンターを使って水面上でプリントする予定だったが、物流や環境上の懸念から計画は中止された。代わりにMX3Dの工場でロボット・アームと溶接機を使って組み立てられ、あとは現地に設置するだけとなった。
3Dプリンターで建てた家
2018年は3Dプリントを建築用途に使う、新しくて印象的な実験がいくつか実施された。3月にアイコン(Icon)というスタートアップ企業が、60平方メートルの家屋を12時間から24時間で3Dプリントで建設できると発表。テキサス州オースティンで開催された大規模イベントSXSW(South by Southwest)で実際に同社の技術を使って建てた初の家屋を公開した。アイコンは10月、プロジェクト拡大のために900万ドルを資金調達すると発表した。2019年にはオランダのアイントホーフェン工科大学が、3Dプリントを使って建設を予定している5軒のうちの最初の1軒を入居可能な状態にする計画だ。
3Dプリントを使った住宅建設の試みはだいぶ前から始まっており、MITテクノロジーレビューは2012年にそのうちの1つを報じている。だが、機器の故障や壁の乾燥時間に関する問題など、実用化にあたっての障害は少なくない。さまざまな障害は解決されつつあるものの、明るい見通しは少し割り引いて考えたほうがよさそうだ。
BMWの3Dプリント部品が100万個超え
製造業の現場では今なお、3Dプリントをより広範に活用する方法が検討されている。だが、高級自動車や航空関連企業の中には、すでに3Dプリント技術を積極的に受け入れたところもある。2018年、BMWは大きな節目を迎えた。2010年以降、3Dプリントで製造されてきた同社の部品が累計100万個に達したのだ(正確に言うと、BMW i8ロードスターに使われている窓用ガイドレールで、HPの3Dプリンターで製造されている)。BMWは試作品の製作や開発段階で1990年から3Dプリントを使ってきたが、この8年間で生産への活用も本格化している。BMWは2018年、20万個を超える部品を3Dプリントで製造する見込みだ。
「リファブリケーター」の打ち上げ
11月のロケットの打ち上げで、ある新しい3Dプリント・システムが国際宇宙ステーションに運ばれた。この新しいシステム「リファブリケーター(Refabricator)」には特徴がある。新しい材料を必要とせず、廃プラスチックをフィラメント(3Dプリントで新しい部品を作るときに使うプラスチック素材)に変えられるのだ。3Dプリンターの操作の大部分は、この試験のため地球から制御される予定だ。
今回の実験は、宇宙旅行用における3Dプリンターの非常に価値ある使い方を試すことになる。3Dプリントしたものを複数回、別の用途で使えるようになれば、宇宙で必要となる材料を少なくでき、より長期にわたる宇宙滞在を実現しやすくなるからだ。
3Dプリントで作ったプラスチック製の自動追跡装置
ワシントン大学の研究者チームは、電池を必要とせずに使用状況に関する情報を送信できる、3Dプリントを使った薬瓶や人工装具を発明した。
3Dプリントされた物体にアンテナが組み込まれており、その物体が特定の動作、たとえば薬瓶の蓋の開閉などの動きが加えられるとアンテナが作動する。2つのアンテナの信号の送信パターンに変化が起こると、それを1つのパターンとし、パターンによって知りたい情報が得られる。研究チームは、物体がどう使われているかを正確に監視できるようになることで、支援テクノロジーが向上すると考えている。この方法なら、水濡れや電池切れは問題にはならない。
研究チームの次の課題は、試作品を小型化することで日常的によく使うものに組み込めるようにすることである。
(おまけ)結婚式!
それから、私は全部3Dプリントを使って自分の結婚式を挙げた! 私だけではない。キャンディス・マエフスキー(シェフィールド大学講師)も自分のブーケを3Dプリントで作っている。
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- エリン・ウィニック [Erin Winick]米国版 准編集者
- MITテクノロジーレビューの宇宙担当記者。機械工学のバックグラウンドがあり、宇宙探査を実現するテクノロジー、特に宇宙基盤の製造技術に関心があります。宇宙への新しい入り口となる米国版ニュースレター「ジ・エアロック(The Airlock)」も発行しています。以前はMITテクノロジーレビューで「仕事の未来(The Future of Work)」を担当する准編集者でした。それ以前はフリーランスのサイエンス・ライターとして働き、3Dプリント企業であるSci Chicを起業しました。英エコノミスト誌でのインターン経験もあります。