激しい気候変動に苦しめられる地球は将来どうなるのか、誰も本当のことはわからない。しかし、カリフォルニア大学バークレー校公共政策学のソロモン・シアン教授は、経済と気候の最新のデータ分析に基づいた将来の地球の姿をEmTech MIT 2016の講演で披露した。データのおかげで温暖化が進んだ世界の姿が以前よりも明確になりつつある。
気持ちのよい予測ではない。気温の上昇によって、農業生産高や人類の健康は著しい損害を被る。また、地球全体の経済成長は大きく低下するだろう。実際、シアン教授がいうように、気候変動がほとんど今のまま進行すれば、地球温暖化が発生しなかった場合と比較して、今世紀の終わりまでに世界のGDPは23%低下することがデータによって示されている。
経済生産の低下による打撃は、貧しい側に分類される世界の60%の人々に偏る、とシアン教授は述べた。そうした状況では、世界の中でも豊かで、北ヨーロッパのように年間気温が平均よりも低い地域の多くが気候変動から恩恵を受けるため、不平等が確実に拡大する。熱帯地方周辺には南アジアやアフリカの多くの地域が含まれるが、この地域ではすでに貧困が発生しやすく、将来は貧困にあえぐことになる。
人々の生活のさまざまな面に「気温は大きな影響力がある」ことが、この研究から得られる洞察だとシアン教授は説明した。極端に暑い気温は製品の製造から乳児死亡率、個人や集団の暴力に至るまで、あらゆることに悪い影響を強く及ぼすことが明らかになっている。「順応することが必要になるでしょう。しかし、多くの費用が掛かるため、順応は困難です」とシアン教授はいう。したがって、シアン教授が示すように、さまざまな部門でコストを低下させるためのイノベーションや新しいテクノロジーが必要になる。
それでも、自分はまだ楽観的であるとシアン教授はいう。近年コンピューターの性能が向上し、膨大な量のデータを利用できるようになった。これは、気候変動がより深刻化した際の経済と社会の詳細な変化を事前に理解できるようになったことを意味する。さらに、情報があれば損害を最小限に抑えたり「どのような世界に住みたいかを決定したりできる」とシアン教授は語った。