芸術の本質が何であるかは、重要な哲学的問題のひとつである。これについて誰もが納得する答えはほぼ見つからないだろう。しかし、明らかなことがある。芸術は、それを育んだ社会の映し鏡になるということだ。
美術館の収蔵品は、その美術館が属する社会をどれほど反映するものだろうか?妥当な出発点は、収蔵品の作者の人口統計的多様性を調べることだ。しかしこれまで、そのような研究は実施されていなかった。
マサチューセッツ州にあるウィリアムズ大学のチャド・トパーズ教授らは、データマイニングとクラウドソーシングを使った研究で、米国全土の美術館収蔵品の人口統計的多様性を初めて浮き彫りにした。その研究結果は、襟を正させるものであった。
トパーズ教授らはまず、米国で最も権威ある18の美術館の収蔵品を調査した。対象となった美術館の多くは世界的にも屈指の規模と権威を持つもので、ワシントンDCのナショナル・ギャラリー・オブ・アート、ニューヨーク近代美術館、サンフランシスコ近代美術館などが含まれる。
最初に、各美術館のオンラインカタログをダウンロードした。それからデータマイニングで、各作品に携わったアーティスト、およびそのジェンダーや民族といった関連情報を収集した。
しかし、こうした情報は手に入らない場合が多い。たとえば多くの作品は作者が不明であり、その場合調査は手詰まりになってしまう。だがデータマイニングの結果、1万1000人を超えるアーティストの名前を突き止められた。データベースに同一のアーティストの名前が複数回現れた例があったため、個人を特定可能なアーティストの総数は最終的に1万108人となった。研究チームはこのデータを足がかりに、研究の次の段階、すなわちクラウドソーシングを使った調査へと移行した。
トパーズ教授らはアマゾン・メカニカル・タークを活用し、人間のクラウドワーカーに対して各アーティストのバックグラウンドの調査と、ジェンダー、民族、出身国、生年月日といったアーティストにまつわる10の質問への回答を依頼した。
各ワーカーにはアーティストの名前と、その情報のダウンロード先である美 …