魚のように泳ぎたいというのは人間の夢だ。魚は優雅な高速遊泳をいとも簡単にやってのける。人間は未だに水泳で時速6キロメートルを達成できていないが、世界最速の魚は最高時速110キロメートルで泳ぐ。最速の潜水艦でさえ最高速度は時速80キロメートルに過ぎない。
魚がどのようにこの離れ業をやってのけるのかは謎に包まれている。魚の動作に特徴的なうねりと、そのうねりの動作が生み出す流体力学の力は、長い間、物理学者や生物学者、技術者らの頭を悩ませてきた。実は、この謎を解き明かす流体力学的推進力の学説が2つ存在する。1950年代と1960年代の古い学説だ。しかし、どちらの説が正しいのかは未だに解明されていない。
この未解明の問題に、中国の北京計算科学研究センターの大学院生であるチンユー・ミンらのチームが新たな見解を示した。ミンらの研究チームは魚が推進する様子をスーパーコンピューターを使ってモデル化し、生きた魚の動きから得た詳細な測定データを使ってモデルから導き出した結果を調整した。その結果、魚がどのように推進力を生み出すのか、さらに、腱などの特定の解剖学的構造が非常に重要な役割を果たす理由が初めて説明された。
まず、魚の遊泳と推進力について簡単に説明する。魚に特徴的なうねるような遊泳動作では、筋肉が体に沿って連続的に収縮しながら曲がった体の逆方向へ進む波を作り出す。この逆方向へ進む波が水を押し、推進力を生み出す。
しかし、どのようにして推進力が生み出されるのかは正確には分かっていない。1952年に英国の物理学者ジェフリー・テイラーは、魚の体の各部位と水の相互作用に着目した。体の各部位が動きに対する抵抗となる抗力を生み出すというのがテイラーの説だ。魚の体のある部位がうねると、体に平行な方向よりも垂直方向に大きな抗力が生まれる。結果とし …