後発の自動運転車メーカーは、ライバルとどう差別化するのか?
ネクストEV米国支社のパドマスリー・ウォリアCEOは、競合相手のひしめく分野でチャンスを狙う。 by Nanette Byrnes2016.10.20
電気自動車ビジネスに、続々と企業が参入している。先頭には テスラ、さらにゼネラルモーターズやフォードなどの従来の自動車メーカーが続き、新時代に備えて変貌しようとしている。すでに、失敗したスタートアップ企業の例もある。そんな中、技術系重役として華々しく活躍するパドマスリー・ウォリアは、かつてシスコの元最高技術責任者を務め、マイクロソフトの役員でもあった。電気自動車の世界を選んだウォリアは「目を大きく開けて飛び込む」と表現し、アメリカの実業界を離れて2015年12月にネクストEV入りすることを表明した。
「同業者がひしめくのはいいことです」とウォリアは10月19日に、マサチューセッツ州ケンブリッジで開かれたEmTech MIT 2016で述べた。「人々がこの分野をチャンスと感じているわけですから」
ネクストEVは、創業者ウィリアム・リーの言葉を借りれば「国際的なスタートアップ企業」を目指している。2014年に中国で創業したネクストEVは、5億ドルの資金を集め、年間28万台の電気自動車を生産できる工場を南京市に建設中で、最初の大量生産車は2018年初めに発売予定だ。
ネクストEVのソフトウェア開発を世界規模で監督する一方、ウォリアは次の市場である米国での事業展開を任されている。消費者のニーズは市場ごとにまったく異なるため、米国での事業展開は中国とは異なるとウォリアはいう。ひしめき合う自動運転業界も時代とともに淘汰されていくとも予測する。
「多くの統廃合が進むでしょう。大手自動車メーカーには、自動運転時代に移行できないところもでてきます」
ウォリアはかつて、業界の大変革を経験した。シスコで最高技術責任者を務める以前、モトローラで同等の職にあり、50カ国にまたがる2万6000人の技術者チームを監督していたのだ。モトローラには携帯電話の新企画が数多くあったが、iPhone時代を生き残れなかった。2014年、モトローラの残存事業はレノボに買収された。
今回ウォリアは、既存の体制を混乱させる側へ回ろうとしている。ネクストEVの米国事業を展開するにあたり、まず最終目標の約3分の1に相当する220人を採用した。最初の戦力には、データ、ユーザーエクスペリエンス、オーディオ、ビデオ、自動車工学、電気工学などの専門家がいるとウォリアはいう。現在、女性はそのうちの26%だが、なるべく早い段階で50%を目指す。
ウォリアはネクストEVサンノゼ支社の受付の女性を面接するなど、採用には直接関わる姿勢をとっている。好奇心と創造性があり、懸命に働く意欲があるかどうかに着目しているとウォリアはいう。「最初の100人が次の1000人を雇い入れる人材になるのです」
ウォリアは、米国でのビジネスをどのように立ち上げるか、詳細は語らなかったが、中国での生産から米国での提携工場まで、生産方法についてはさまざまな選択肢を考えているという。米国での売上は、車の販売だけではなく、ウォリアがイメージするタイプの車に関わるサービスからも得る。従来の車というよりは、動くリビングルームのような空間を提供するのだ。
テスラから10年、グーグルから数年遅れて起業したネクストEVは、それらの企業がもつドライビングデータや経験がなく、そこが短所ともいえるが、デジタル地図などはそのうち一般に開放されるだろうとウォリアは期待する。ネクストEVの有利な点は、前に参入した企業のように、自動運転システムの多くを開発することなく、顧客に意識を向け、移動時間をより生産的に変え、大きな買い物をする楽しみを提供する電気自動運転車を創造できることだという。
「車はコンピューターやロボットになりつつあります。チームのメンバーには、私たちは車ではなく、車の形をしたロボットを作ろうとしているのだといっています」
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クレジット | Photograph by Justin Saglio |
- ナネット バーンズ [Nanette Byrnes]米国版 ビジネス担当上級編集者
- ビジネス担当上級編集者として、テクノロジーが産業に与えるインパクトや私たちの働き方に関する記事作りを目指しています。イノベーションがどう育まれ、投資されるか、人々がテクノロジーとどう関わるか、社会的にどんな影響を与えるのか、といった領域にも関心があります。取材と記事の執筆に加えて、有能な部下やフリーライターが書いた記事や、気付きを得られて深く、重要なテーマを扱うデータ重視のコンテンツも編集します。MIT Technology Reviewへの参画し、エマージングテクノロジーの世界に飛び込む以前は、記者編集者としてビジネスウィーク誌やロイター通信、スマートマネーに所属して、役員会議室のもめ事から金融市場の崩壊まで取材していました。よい取材ネタは大歓迎です。nanette.byrnes@technologyreview.comまで知らせてください。