デジタル通貨の市場は下降しているが、終わってしまったわけでは決してない。民間の暗号通貨は人気が落ちているとはいえ、社会は中央銀行が後ろ盾となる国家の電子通貨の時代へと向かっていることは確かなように思える。
中央銀行は、国家のために金融政策を策定し、インフレを管理し、「最後の貸し手」として行動する組織である。英国で言えばイングランド銀行であり、米国であれば連邦準備制度理事会である。事実、世界のそうした中央銀行のうち少なくとも15行が、国家による電子通貨という考えを真剣に受け止めており、その他の中央銀行も少なくとも調査をしていると国際通貨基金(IMF)の最近の報告書に記されている。
報告書によれば、こうした潮流の主要因は2つある。第一に、デジタル・マネーという新しい形態が出現したことで「現金の役割が縮小」していることだ。それに加えて、中央銀行の中には、デジタル・マネーの技術を活用して、銀行口座を持っていなかったり、近代的な金融サービスを利用できなかったりする何億人もの人々に手を差し伸べることに関心を持っているところもある。さらに、大部分の中央銀行は、物理的な存在である紙幣を、デジタル・マネーに置き換えることで、コストを下げられるかもしれないと考えている(デジタル通貨発行に関心を有している理由として、中央銀行が挙げている事項については下の表を参照。左から、金融包摂/費用対効果/現金の使用の減少)。
中央銀行がデジタル通貨への関心を高めているのは理にかなっている。暗号通貨などの支払いに関する新技術は、世界の金融システムを変えつつあり、中央銀行はそうした技術が中央銀行の役割にいかなる影響を及ぼすかを理解する必要があるからだ。IMFのクリスティーヌ・ラガルド専務理事は、前述の報告書を発表した講演で、「通貨自体が変化しつつあります」と述べ、「規制の枠を超えて、国 …