失明状態の遺伝病を治療する米国初の遺伝子治療法が来年認可へ
失明を引き起こす遺伝性疾患の治療法をスパーク・セラピューティクスが開発。FDAからの認可まであと一歩の段階にある。 by Emily Mullin2016.10.19
遺伝性疾患の治療を目的とした米国初の遺伝子療法の実現が、今までになく現実味を帯びてきている。
スパーク・セラピューティクスは米国食品医薬品局(FDA)に遺伝子療法の認可を申請する2番目の企業だが、スパークは遺伝子療法を米国市場に売り出す最初の企業になりそうだ。
スパークのキャサリン・ハイ共同創業者は火曜日に開催されたEmTech MIT 2016で講演し、来年を目処に、最初の製品発売に向けて動いていると明言した。 「SPK-RPE65」という遺伝子療法は、失明につながる目の変異を治療する。 遺伝性網膜ジストロフィーには、今のところ治療薬が存在しない。
スパークは2017年初頭までにFDAの認可を得る予定だ。もし来年認可が下りれば、米国で初めて遺伝子治療にゴーサインが出ることになる。ヨーロッパではストリムベリスやグリベラといった遺伝子療法がすでに認可されているが、米国ではまだそのような例がない。
グリベラはリポ蛋白リパーゼ欠損症(LPLD)という珍しい遺伝性疾患に対する治療法だ。グリベラの開発元であるユニキュアは当初FDAからの認可を目指していた。しかしFDAは治療の有効性を証明する臨床試験をもっと実施するよう要求して申請を差し戻し、2015年12月、ユニキュアはFDAから認可を受ける方針を撤回した。
遺伝子治療の分野は、臨床的失敗もたっぷりと経験してきた。1999年には治験が原因で起きた合併症により患者1人が死亡する事故が起きている。過去に起きた失敗は、モデル動物による実験で遺伝子治療に起こりうる問題を十分に示せなかったことが一因となっていると、ハイ共同創業者はいう。
「治療法の開発に本格的に取り組む前に、最低限解決しておかなければならない課題があるのです」
スパークはSPK-RPE65の開発でこの問題を解決したといっていいだろう。スパークは今週開かれた米国眼科学会の年次ミーティングで、フェーズ3の臨床試験データを発表した。失明状態にある被験者29名のうち27名に、処置後1年以上にわたる視覚機能の向上が見られ、治療によって深刻な有害事象が生じた患者は1人もいなかったという。治療は患者に麻酔をかける45分程度の手術の中で施され、処置後30日以内に視力の改善が見られるとハイ共同創業者は語った。
火曜日のインタビューでハイ共同創業者が語ったところによると、スパークはすでに臨床試験を終えており、FDAへの申請前にこれ以上の試験予定はないという。FDAが申請を受諾することに対する、スパークの自信が垣間見える。
SPK-RPE65の臨床試験を始めた2007年から、スパークはある小規模な企業グループに参加している。この企業集団が、実験的な遺伝子治療を初期の安全性試験から、臨床試験の最終段階へと進展させてきたのだ。一方で、スパークは血友病の遺伝子療法開発にも取り組んでおり、 すでに前途有望な成果が得られている。
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クレジット | Photograph by Justin Saglio |
- エミリー マリン [Emily Mullin]米国版
- ピッツバーグを拠点にバイオテクノロジー関連を取材するフリーランス・ジャーナリスト。2018年までMITテクノロジーレビューの医学生物学担当編集者を務めた。