87年前の映画革命を伝える記事を、VR、3Dに読み替えてみよう
映画の黎明期から、映画製作者は視覚表現の革新に取り組んでいた。 by MIT Technology Review2016.10.19
黎明期の白黒無声映画から、瞬く間に産業化を果たした映画は、口がきけるようになり、多くの色を身にまとうようになった。今や、将来を見通す映画プロデューサーのウィリアム・フォックス(後の20世紀フォックス の創業者)は、舞台の全長にわたるスクリーンに投影するように設計された新たな幅広フィルム仕様「グランジャー(雄大な)ピクチャーズ」を発表した。
新仕様の発表は、新たなカメラと新たな投影装置、巨大スクリーン、撮影スタジオ内での新たな手法の出現を意味する。(映画より舞台化粧が派手で手が込んでいる)ベテラン舞台俳優なら悦に入って笑みを浮かべるかもしれないが、(それまで解像度が低かった)セルロイド映画のスターはメーキャップ手法をいちから学び直さなければならない。映画の背景は現在の慣行よりもはるかに詳細に描く必要があるし、従来のカメラトリックの多くは、スクリーン幅の拡大により、見直す必要があるだろう。
幅広フィルムでは現在可能な撮影よりもはるかに写る範囲が広がるため、監督や芸術監督は、従来は不可能だった群衆シーンを表現できるようになる。また、新たなフィルムは、撮影現場でよくある窮屈なセットを不要にし、クローズアップは、胸を打つような、いっそう大きな効果をもたらすと期待されている。
フォックス・ケースが使うフィルムは70ミリ幅で、現在利用されている標準的なフィルム幅のちょうど2倍だ。パラマウント・ラスキーは56ミリ幅のフィルムを検討中と報じられており、アメリカ・ラジオはフォックスとパラマウントの中間の幅に決定したとされている。
幅広のフィルムと大画面は、最終的に普及するのは確かだろう。しかし、現時点で必要なのは、幅広フィルムの標準幅についての合意だ。平均的な映画館オーナーは、いまだに音響装置の設置費用が負担になっており、映画会社ごとに異なる幅のフィルムを投影するために、複数の映写機の購入を余儀なくされる可能性に直面している。
異論はあるが、さまざまな映画が撮影される一方で、幅広フィルムでは立体視はできない。三次元は依然映画の究極の目標であり、完全な色と音の処理を含めて、スクリーンに実生活そのものとの区別が困難な幻想をもたらすだろう。
1929年12月発行のテクノロジーレビューの記事「雄大な映画」より抜粋
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