近い将来、アウディの生産施設の無線接続は、生産されている車と同じくらい高度なものになるかもしれない。
ドイツの自動車メーカー、アウディは次世代無線通信テクノロジーである5Gを利用し、自社の生産施設にプライベート無線ネットワークを構築する計画を進めている。アウディ生産研究所のヘンニング・レーザー所長は、自社で管理するプライベート5Gネットワークは、既存のイーサネット、Wi-Fi、4G LTEなどに比べて、より高速かつ安全に製造ロボットやその他の機器を接続できるようになると話す。
5Gの公衆ネットワークは今年、米国で運用が開始され、2020年には全米で利用可能になる見込みだ。従来の無線接続に比べ、5Gでは消費者の携帯電話やタブレットのアップロードおよびダウンロード速度が高速化される。だが、もう1つ、他の無線テクノロジーより優れた性能を持つこの新たなテクノロジーに期待されているのが、プライベート携帯電話網の普及だ。5Gはデータ転送の遅延を30ミリ秒から1ミリ秒以下に短縮するとされている。正常に機能するため即時接続を必要とする機器が、ようやくモノのインターネット(IoT)の一部としてネットワークに参加し、データの交換ができるようになるわけだ。また、5Gは異なる種類のデータを扱うようプログラムしたり、異なる方法で実装したりといったことも可能だ。たとえば、ネットワーク全体が崩壊した場合でも、必要不可欠な機器だけは動作を続ける、といった設定ができる。
これにより、先に挙げた5Gのような機能を持たない4G LTEや、固定ケーブルが必要とされるイーサネット、携帯電話網接続よりもハッキングが簡単なWi-Fiといった既存の選択肢に比べて、5Gに魅力を感じる企業もあるだろう。「現在でもメーカーはプライベートLTEネットワークを構築できますが、工場用ロボットなどは制御できません」とクアルコム(Qualcomm)技術マーケティング部のパトリック・ ルントクヴィスト部長は話す。クアルコムはプライベート・ネットワーク用のチップセットとモデムの販売を狙っている。
MITテクノロジーレビューの取材に答えた複数のアナリストによると、アウディ、BMW、ダイムラー、フォルクスワーゲンに加え、化学やガス、石油大手、公益企業、それに主要な積出港などが独自の5Gネットワークに興味を示しているという。
またプライベート5Gネットワークは、ネットワークの管理や関連機器を販売するテック企業にとっても巨大なマーケットを生み出す可能性がある。エリクソン(Ericsson)、ファーウェイ(Huawei)、ノキア、クアルコムといった大企業のほか、比較的小規模の …