遺伝子編集ベビーを認めるか否か、判断する権限を持つのは誰だろうか?
賀建奎(フー・ジェンクイ)准教授は、研究室で受精卵を使って、遺伝子編集ツールであるクリスパー(CRISPR)によりDNAを改変した赤ん坊を生み出す試みに初めて成功したと主張している。2017年3月のフー准教授の文書は、倫理的問題をはらんだ今回の事案の発端となったものである。
賀教授は現在、倫理規則に違反した疑いで、中国の複数の組織による取り調べを受けている。
しかし、研究計画書(上に画像を掲載)で賀教授は、万事問題はないだろうと述べて審査委員たちを安心させていた。賀教授は、審査委員会に対して、全米アカデミーズ(米国の学術機関)がちょうど1カ月前の2017年2月に、深刻な疾患を治療する目的でのヒト胚の編集を「初めて」認可したと伝えたのだ。
全米アカデミーズは規制を担当する機関や政府機関ではないし、特定の実験を認可・禁止することもない。また、同じ年に全米アカデミーズが出した遺伝子編集についての長大な報告書では、改変内容が次世代に遺伝しうるゲノム編集は「ヒトにおいて試される時期には達していない」と警告されている。それにも関わらず、フー准教授は研究計画書に先述のような内容を記していた。
フー准教授にとって重要だったのは、全米アカデミーズの報告書の最終的な結論だ。警告の文章を数多く含んでいた一方で、この報告書のメッセージは明確だった。この報告書は、一部の人々が当時望んでいたような、CRISPRベビーの作成を一定期間禁止するとい …