荒天時の最適ルートを自動提案、AIで変わる「物流の巨人」
米総合物流最大手のUPSは、吹雪や嵐など輸送の障害となる事象が発生したときに最適な輸送ルートを再設定するオンライン・プラットフォームを稼働させた。機械学習と最新の分析システムを組み合わせたプラットフォームの導入により、年間1億ドルから2億ドルのコストを削減できるとみている。 by Elizabeth Woyke2019.01.16
デンバーが吹雪に見舞われたら、市内を行き交う数千個の荷物の遠方への配送は遅延してしまうことがある。もしユナイテッド・パーセル・サービス(United Parcel Service:UPS)が嵐を事前に把握していたら、オンライン注文やクリスマスプレゼントをさばくのにもっとも効率の良い方法とはどのようなものだろうか。
米総合物流最大手であり、米国最大の宅配便業者でもあるUPSは毎冬、そのような課題に取り組んでいる。想定外の大量の荷物をもっともうまく扱える施設や、それらの荷物を運ぶもっとも効率の良い方法を特定することは、経験豊かなUPSの従業員をもってしても難しい。荷物の種類や配達までの期日、送り先などの変動要素によって事態はさらに複雑になり、UPSの輸送計画立案担当者の作業を遅らせ、リソースをすばやく移すことが困難となる。
そのような事態を支援するため、UPSは最近、機械学習と最新の分析システムを組み合わせたオンライン・プラットフォームを構築した。「ネットワーク・プランニング・ツールズ(NPT)」と名づけられたこのアプリを使うと、UPSの輸送計画立案担当者たちは世界中のUPS施設の活動状況を確認し、もっとも余力のある場所へ荷物を向けることができる。重量や大きさ、配達期日など、輸送中の荷物の詳細も確認できる。UPSには、配達ルートの最終部分を表示する「オリオン(ORION)」というシステムや、物流施設の最適化に焦点を当てた「エッジ(EDGE)」プログラムがすでにあるが、NPTは全体を俯瞰できる視点を提供する。カーナビアプリ「ウェイズ(Waze)」が渋滞時に車のルートを変更するように、NPTが国内を移動する荷物のルートを再設定してくれる日がやって来るかもしれない。
アプリには人工知能(AI)がいくらか活用されており、施設のカテゴリー分けや予測作成に使用されている。UPSでNPT開発を主導するロブ・パペッティによると、機械学習アルゴリズムが、同社の輸送計画立案担当者の下した決定を分析したり、その決定が顧客満足度や社内コストにどう影響したかを評価したりしているという。「アプリは自身から学び始め、ある選択肢と別の選択肢を比較しますが、その基盤にあるのは顧客に優れたサービスを提供できた際の実績です」。
このような知見は、繁忙期の年末シーズンには非常に重要だ。UPSは2018年の年末にかけて、かつてない量の荷物の配達を予想している。その数は2017年の5%増となる、およそ8億個にもなる。準備段階においてUPSはNPTアプリを活用して、荷物の処理に手間取っていたイリノイ州の施設などのボトルネックを特定し、解消することに成功した。「数分のうちに、その施設の未処理分を回避・救済しながら、顧客に確実に荷物を届ける方法を特定できました。NPT導入前だったら、少なくとも1週間はかかっていたでしょう」とパペッティはいう。UPSはNPTの導入により、年間で1億~2億ドルのコストを節約できると試算している。
マサチューセッツ工科大学(MIT)輸送・物流センター(Center for Transportation & Logistics)を率いるクリス・カプリス教授は、UPSのような企業にはNPTのようなプログラムが必要だという。広範な道路経路、鉄道、空路といった輸送方法をすばやく切り替える必要 …
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