マラリアの根絶を願う億万長者のビル・ゲイツは、マラリアを媒介する蚊を絶滅できる可能性がある遺伝子ドライブ技術に「精力的に」取り組んでいる。
ゲイツは遺伝子ドライブを「飛躍的な進歩」と呼んでいるが、遺伝子ドライブはリスクが大き過ぎて絶対に使用すべきではないと訴える環境団体もある。
いま、両者の対決は山場を迎えている。
11月13日に出回った書簡において、ビル・アンド・メリンダ・ゲイツ財団などから資金提供を受けている科学者たちが警告を発している。国連が11月17日から22日にかけてエジプトのシャルム・エル・シェイクで開催する生物多様性に関する会合に乗じて、遺伝子ドライブのフィールドテストの世界的な禁止を促す動きがあるというのだ。
問題となっているのは、国連の生物多様性条約の改定を手がけている外交官が作成した草案だ。この草案が採択されれば、たとえ実験の一環であったとしても、人為的に操作された遺伝子ドライブが含まれる生命体を自然界に解き放つことを「控える」ように各国政府に求めることになる。
遺伝子ドライブの世界的な一時禁止を求める提案を推進しているのは、遺伝子改変された大豆やトウモロコシにも反対している環境団体だ。これらの団体は遺伝子ドライブの技術を原子爆弾になぞらえている。
これに対し、シアトルに拠点を置くゲイツ財団は対抗キャンペーンに出資している。広告代理店に依頼して遺伝子ドライブ禁止法案の先手を打ち、11月13日に書簡を配布した。書簡に署名している人物の多くは、財団から直接資金提供を受けている。
「率直に言って、両者によるロビー合戦ですね」と言うのは、ノースカロライナ州立大学で遺伝子ドライブの指針について研究しているトッド・クイケン博士だ。クイケン博士自身もゲイツの書簡に署名するよう依頼されたが、国連の技術アドバイザーという立場上断ったという。
新しい技術
遺伝子ドライブ技術では蚊のDNAを組み換え、繁殖時に特定の遺伝子改変を拡散させる。生存に逆効果となる遺伝子だ。
今年、英インペリアル・カレッジ・ロンドン(Imperial College London)の研究チームが研究室の環境で蚊の集団の根絶が可能なことを示した。自然環境に解 …