KADOKAWA Technology Review
×
【冬割】 年間購読料20%オフキャンペーン実施中!
高度な意思決定に「感情」は不要か?その意外な役割が明らかになる
Freepik
ニュース Insider Online限定
How emotions underlie even the coldest human calculations

高度な意思決定に「感情」は不要か?その意外な役割が明らかになる

難しい意思決定をするうえで、感情は邪魔になると考えられがちだ。しかし、フランスの研究者らは、名人級のチェスプレイヤーが難しいチェスの問題を解く際の感情状態の変化を記録し、巧みな意思決定には感情が重要な役割を果たしているとの結論に達した。 by Emerging Technology from the arXiv2019.02.07

きわめて難しい意思決定をする際に、感情は邪魔になると考えがちだ。この厄介な人間特有の産物を取り除ければ、人間は間違いなく、きわめて過酷な状況でも冷静で抜け目のない選択ができるはずだ。

だが、そうではない。意思決定はもっと複雑なプロセスであることが判明した。神経科学者は感情を持つことを妨げる脳損傷を負った人々について長年研究してきた。こうした人々は、緻密で冷徹な殺人者になるのではなく、決断ができずに身動きがとれなくなる。

実のところ、たとえばサンドウィッチの具材をチーズとハムのどちらにするかなどの日々の選択となると、どんなに理屈をこねても意味がない。この種の意思決定では最終的には感情がものをいう。

だが、数学やチェスに関わる計算など、もっと複雑な計算の場合はどうなのか。そのような計算が、人間の気まぐれな感情に左右されることなどあるのだろうか。

実際には、こうした計算も感情に左右されることがあると、フランスのグルノーブル大学のトーマス・ガンツら研究チームは述べている。ガンツらは、徐々に難しくなる問題に取り組むチェスプレイヤーが体験する感情状態の変化を測定した。その結果、プレイヤーが複雑な問題をうまく解くうえで、感情は重要な役割を果たしていることがわかったという。

近年、人間の感情状態の変化を自動的に測定する能力は飛躍的に向上した。瞳孔の大きさの変化は集中レベルの指標である。心拍数は興奮の尺度であり、顔色の変化を見ることでモニターできる。

身体の姿勢とジェスチャーも感情の変化の指標であり、キネクト(Kinect)などの3Dカメラで簡単にモニターできる。これらはすべて、頭の向きや視線によって測定される人間の注意力の対象と相関関係がある可能性がある。

これらの指標が一体となって、個人の感情状態と、それが刻々と変化する様子を示す包括的な全体像を浮き彫りにする。

ガンツらは、徐々に難しくなるチェスのパズルを30人の名人級と中級のチェスプレイヤーに解かせて、プレイヤーの感情状態に注視した。個々のパズルではプレイヤーが相手を詰む必要があった。1手から3手で解けるパズルは簡単 …

こちらは有料会員限定の記事です。
有料会員になると制限なしにご利用いただけます。
有料会員にはメリットがいっぱい!
  1. 毎月120本以上更新されるオリジナル記事で、人工知能から遺伝子療法まで、先端テクノロジーの最新動向がわかる。
  2. オリジナル記事をテーマ別に再構成したPDFファイル「eムック」を毎月配信。
    重要テーマが押さえられる。
  3. 各分野のキーパーソンを招いたトークイベント、関連セミナーに優待価格でご招待。
【冬割】実施中! 年間購読料20%オフ!
人気の記事ランキング
  1. OpenAI has created an AI model for longevity science オープンAI、「GPT-4b micro」で科学分野に参入へ
  2. Promotion Innovators Under 35 Japan × CROSS U 無料イベント「U35イノベーターと考える研究者のキャリア戦略」のご案内
  3. 10 Breakthrough Technologies 2025 MITTRが選んだ 世界を変える10大技術 2025年版
  4. Driving into the future 「世界を変える10大技術」の舞台裏、2024年の誤算とは?
▼Promotion
MITTRが選んだ 世界を変える10大技術 2025年版

本当に長期的に重要となるものは何か?これは、毎年このリストを作成する際に私たちが取り組む問いである。未来を完全に見通すことはできないが、これらの技術が今後何十年にもわたって世界に大きな影響を与えると私たちは予測している。

特集ページへ
日本発「世界を変える」U35イノベーター

MITテクノロジーレビューが20年以上にわたって開催しているグローバル・アワード「Innovators Under 35 」。世界的な課題解決に取り組み、向こう数十年間の未来を形作る若きイノベーターの発掘を目的とするアワードの日本版の最新情報を発信する。

特集ページへ
フォローしてください重要なテクノロジーとイノベーションのニュースをSNSやメールで受け取る