グーグルクラウドAI部門トップが語る、AI導入の「誤解」と「正解」
人工知能(AI)技術は今後、企業のビジネスにどのような影響を与えるのだろうか。カーネギーメロン大学のコンピューターサイエンス学部長からグーグルのクラウドAI事業責任者に転じたアンドリュー・ムーアに話を聞いた。 by Will Knight2018.11.13
アンドリュー・ムーアは、グーグルのクラウド人工知能(AI)事業の新しい責任者だ(日本版注:ムーア氏はこの9月まで米カーネギーメロン大学コンピューター・サイエンス学部長を務めていた)。グーグルのクラウドAI部門は、機械学習のツールや手法を、通常のビジネスでさらに使いやすく、有用なものにすべく奮闘している。
そのような目標に向け、ムーアのチームは11月8日、異なる機械学習コンポーネントをつなぐモジュラー・フレームワークの「AIハブ」や、機械学習プロジェクトの移植性を向上させるソフトウェア「キューブフロー・パイプラインズ(Kubeflow Pipelines)」など、新しいツールを発表した。
AIの使いやすさを向上させる取り組みにより、AI技術がもたらす影響が決定付けられる可能性が高い。AIを使いやすくする取り組みは、グーグルのような企業の将来にとっても非常に重要なものになるだろう。
ムーアが11月8日の発表に先立って、MITテクノロジーレビューのウィル・ナイトAI担当上級編集者のインタビューに応じた。
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——あなたも含めて、多くのAI研究者が大企業に取り込まれています。それはAIにとって良いことなのでしょうか?
25年先のことを考える人々と、「いま何ができるか」と問いかける人々の両方がいるのは、世界にとって健全なことです。
カーネギーメロン大学(CMU)には、大規模な洪水に備えて、大きなコンクリートのかたまりを持ち上げて素早く堤防をつくる高さ20メートルのロボットのプロジェクトがあります。世界にとって、そのような研究をしている場所があることは非常に大切です。しかしAI分野でそのような研究ばかりしているのでは、あまり意味がありません。
CMUにいたころ、「私のビジネスがシリコンバレーのスタートアップに完全に奪われてしまうことを心配しています。どう対抗したらよいでしょうか」と聞きに来る巨大な組織や企業の指導者に何百回も会いました。
AIの分野自体のために何かをするだけでなく、AIを必要とするすべての利害関係者のために役立てることを目指している場所にいることほど、エキサイティングなことはありません。
——AIはビジネスにおいて、どのくらいの規模のテクノロジーシフトになるのでしょうか?
電気の実用化と同じくらいですね。電化によって世界が大きく変貌するのに20年から30年程度かかりました。AIをある種の「魔法の粉」のようなものだと思い込んでいる、組織で大きな責任を負った上級幹部をときどき見かけることがあります。組織にふりかければ、すぐにスマートになると思っているのです。しかし実際には、AIの実装を成功させるには、長く辛抱強い作業が必要です。
「このAIプロジェクトを実行するにはどうすればいいでしょうか」と聞きに来る人がいたら、私たちは …
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