インフルエンザの季節がやってきたが、予防接種を受けないことのコストがある。
昨年、インフルエンザが米国経済に与えた損失は、生産性の低下、健康保険による診察費負担、その他のコストを合わせて55億ドルに及ぶ。損失の大部分は、袖をまくり、腕をチクッと刺してもらう、予防接種をしなかった人のせいだ。
ワクチンで予防できる疾患全体では、2015年に約90億ドルの損失がアメリカ全体に生じている。『ヘルス・アフェアーズ』誌に掲載された最近の研究結果によれば、損失の80%は、ワクチンを接種しなかった人に原因があるという。損失の大部分は1700万件近くもあるインフルエンザ患者が占めるが、肺炎、髄膜炎、B型肝炎、ヒト・パピローマウイルス(HPV)もそれなりの影響がある。
公衆衛生の観点では、この損失の削減は、簡単に達成できる目標だ。あるいは「簡単に達成できるはずの目標」というべきか。昨年、米国の18歳以上の成人のうち、インフルエンザワクチン接種を受けたのはわずか約42%だった。別の研究では、ワクチンを受けない理由として、ミレニアル世代の若者はインフルエンザ予防接種のコストを引き合いに出すことが多いとわかった。しかし「コストがかかる」のは必ずしも合理的な説明ではない。いったんインフルエンザになれば、治療薬を購入する費用は、ワクチンの費用とほとんど同額だ。しかも、時給で働いている人にとって、インフルエンザで仕事を休むことの代償はとても大きい。また、ミレニアル世代の若者は、予防接種が効くかどうかにも懐疑的で(実際、効くのだが)だ。ただし、効果への懐疑的態度は上の年代でも同様で、35~44歳の間の49%が、ワクチン接種を受ける予定がないと答えている。
論文の著者である研究者は「ワクチンは、健康における介入手段の中でも、もっとも安全で、もっともコストパフォーマンスの高いもののひとつであり、社会的にも経済的にも、多数の利点がある」にも関わらず「米国の成人は、推奨される水準でワクチン接種を受けていない」という。
自分自身の経済的な利益について正しく決断をするのは、いつでも難しいものだ。しかし、今回の件については、かなりシンプルだ。予防接種を受けて、健康でいよう。
(関連記事:Health Affairs, Bloomberg, “Cows Engineered with Human Genes Could Stop Our Next Disease Outbreak,” “Freeze-Dried Molecules Can Be Used to Whip Up Medicines Anywhere”)