米国の失業率が過去十年間で最低水準となり、サイバーセキュリティなどのテクノロジー分野では依然としてスキル・ギャップがある現在、企業は労働者の選り好みなどはしていられない。だからこそ、いま抱えている従業員の再訓練へ投資する傾向が、企業の間で突如として盛んになってきているのだ。従業員にとっては朗報と言えるかもしれない。
企業側と従業員側の利害は一致しているようだ。中級以下のスキルを持つ労働者の間では自動化の影響が懸念されており、両者ともにスキルの向上と再教育を求めているからだ。企業側は従業員を引き留めておきたいし、スキル・ギャップ問題はもともと企業側にも非があるとはいえ、従業員の能力格差は無くしていきたい(「スキル・ギャップ神話で 労働問題は解決しない」参照)。一方、従業員側は時代遅れにならないように自分のスキルを維持し、ロボットに取って代わられないようにしたいと考えている。
アクセンチュア(Accenture)の調査によると、労働者の67%が知能機械を使うスキルを伸ばしていく必要があると考えている。「ミレニアル世代の労働者は投資を求めており、企業側は投資に対する見返りを受けられます」とアップスキル・アメリカ(UpSkill America=アスペン研究所による職業訓練プログラム)のジェイミー・フォール理事はいう。「企業が従業員の職能開発に前向きでなければ、従業員を会社に縛ることはできなくなるでしょう」。
だが、手作業の仕事を人工知能(AI)を使った仕事へ切り替えるのは、単にオンラインで講義を受けて済むような単純な話では無い。
AT&Tはフューチャー・レディ(Future Ready)という職業訓練に10億ドルを投資した。自社の調査によって、従業員全体の約半分しか必要とされる技術的なスキルを持っていないことが分かったからだ。AT&Tは年間2億ドルをオンライン教育と実技訓練、従業員のスキルアップ用のプラットフォームにつぎ込んだ。このプラットフォームは、社内のどの職種でスキルアップが進んでいるか、あるいは遅れをとっているかを追跡し、従 …