ハーバード大学の地下にある研究所に水の入ったコップがある。コップの底では、まるで極小のリボンがダンスをしているように、帯状の薄い金網が数本波立っている。ペンのキャップほどの長さがある網を使うと、かつてないことができる。生きているネズミの脳に注入すると、網は1年間以上、安全に個々のニューロンを刺激し、その細胞の挙動を測定するのだ。
電子的な脳インターフェイスはパーキンソン病のような神経疾患の患者に、いつの日か役立つだろう。パーキンソン病で脳のある領域の神経細胞群が次々と死に始めると、自分の意思とは無関係に体が震える症状が引き起こされる。この領域に狙いを定めて電気的な刺激を送れば、生存している細胞の状態を元に戻してパーキンソン病の症状を止められるかもしれない。
現在利用できる「深部脳刺激療法」と呼ばれる電気療法には大きな欠点がある。治療のために、脳の深いところに硬い電極を埋め込むため、脳のような柔らかい器官にとって理想的な治療からは程遠いのだ。治療からおよそ4週間後には瘢痕(はんこん=傷が治った状態)組織が形成され始める。この組織に …