悪用厳禁、スマホとWi-Fiで壁越しの動きを透視する新手法
Wi-Fi電波の電磁場の歪みを計測することで、建物や部屋の壁の向こう側にいる人間の動きをスマホ1台で判別する手法をカリフォルニア大学の研究者が開発した。Wi-Fi送信機がいたるところに設置されている現在、私たちのプライバシーは重大なリスクに晒されている。 by Emerging Technology from the arXiv2019.01.31
世の中はWi-Fiの電波であふれている。自宅、職場、さらには公道でも、人間の周囲では常に2.4ギガヘルツおよび5ギガヘルツの電波信号が飛び交っている。そして、人が動くと電磁場が歪められ、電波が反射したり屈折したりする。
この現象によって、さまざまな研究者グループが面白いアイデアを考え出してきた。理論上、この電磁場の変化を利用して、人の位置や振る舞い、動きを判別できるはずだという。実際、いくつかの研究者グループは、Wi-Fiを使って壁の向こうの様子を「見る」映像システムを作成した。
しかし、こうしたシステムはいずれも欠点がある。たとえば、関与する Wi-Fi送信機の正確な位置を把握していなければならず、既知の信号を送受信できるようにネットワークにログインしている必要がある。
こうしたことは、スマホに組み込まれているような既製のWi-Fi検出機能しか使えない場合には不可能だ。この種の検出機能は初歩的すぎて、Wi-Fiネットワーク自体の存在が分かるだけで、ドアの向こうで起こっていることを詳細に知ることはできない。
少なくとも、誰もがそう思っていた。だがいま、その認識はカリフォルニア大学サンタバーバラ校のイェンツー・チュー助手らの研究によって変わった。チュー助手らは周囲のWi-Fi信号と普通のスマホを使って、壁の向こうを見透かす方法を見い出した。
この新技術によって、前例のないプライバシーの侵害が可能になる。「スマホを使っている悪意のある人物が、周囲のWi-Fi通信の反射を利用して、壁の向こう側から自宅やオフィスにいる個人の位置を突き止め、追跡できます」。
まず、背景情報を説明しよう。もし人間がWi-Fiの電波と同じように世界を見ることができたら、見える景色は奇妙なものだろう。ドアや壁はほぼ透明で、ほとんどの家やオフィスがWi-Fi送信機の明かりで内側から光っている。
しかし、多くのものが透明であるにもかかわらず、世界は理解しがたいものに見えるだろう。なぜなら、壁、ドア、家具など、すべてのものがこの …
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