5年前に自らが立ち上げたブロックチェーン・システム「イーサリアム」の直面している問題についてヴィタリック・ブテリンに尋ねると、大抵はイーサリアム(Ethereum)独自の専門用語を使ってマシンガンのように早口で答えてくれる。だが、イーサリアムの将来におけるブテリン自身の役割について尋ねてみると、その口ぶりはひどく慎重だ。
弱冠24歳のブテリンは、自らの創造物であるイーサリアムの周辺で発生してきた理想主義的なコミュニティにおいて、いまもなお旗振り役だ。10月下旬にプラハで開催された、何千人もの開発者、投資家、起業家らが集う「デブコン(Devcon:開発者会議)」でも話題の中心はブテリンだった。デブコンは非営利団体のイーサリアム財団が主催する年1回の「親族会」的なイベントだ。
もっとも盛り上がるディスカッションのトピックは、ブテリンが語る「イーサリアム2.0」のビジョンだ。現在のイーサリアムよりもずっと大規模に効率よく運用できる能力を持ち、より幅広いユーザー層にアピールするものになるという。だが、デブコンの合間のMITテクノロジーレビューとのインタビューでは、ブテリンは「コミュニティの成長における必要不可欠な一過程」として、彼自身が舞台裏へ徐々に引っ込んでいくべき時期に来ていると話した。
なぜか? 簡単に言えば、システムが完全に非中央集権化されれば、問題が起きた時にシステム全体を台無しにしてしまうような単一の構成要素が何もないことになるからだ。それ …