ガリレオが学生の時にピサの大聖堂でランプの揺れを見て、自分の脈拍に対してその揺れの時間を測ったことは有名だ。ガリレオは、揺れの周期が振幅に関係なく一定であると結論づけた。
さらにガリレオは、振り子が時計を制御できると提案し、後にそのような機械を設計した。しかし、振り子時計を最初に作ったのはクリスティアーン・ホイヘンスであり、ガリレオの死後約15年が経ってからのことだった。
この発見をするにあたり、ガリレオは天才的に、空気の抵抗、温度、光のちらつき、騒音、他の人々といった大聖堂に存在する厄介な詳細をすべて無視した。そうして、突出した細部に焦点を当てて、ランプの揺れる周期だけを使ったシンプルなモデルを考えたのだ。
多くの歴史家にとって、ガリレオのアプローチは科学的方法の発展における初期段階を代表している。同じプロセスが、飛行、量子論、電子計算、一般相対性理論、そして人工知能(AI)さえも生み出した。
近年、AIシステムはデータそのものに興味深いパターンを見つけ始めており、その結果として一定の物理法則を導き出してさえいる。しかしこうした事例において、AIが学習するのは常に、現実の世界にある煩雑さが除かれた特別なデータセットである。こうしたAIシステムの能力は、ガリレオのような人間の能力には遠く及ばない。
ここで興味深い疑問が生じる。ガリレオがしたように、観察対象の世界のさまざまな様相を説明するのに必要な情報に的を絞って理論を生み出すAIシステムを作ることは可能だろうか。
マサチューセッツ州ケンブリッジにあるマサチューセッツ工科大学(MIT)のテイリン・ウー研究助手とマックス・テグマーク教授による研究により、一つの答えが得られている。この2人が開発したのは、ガリレオのアプローチや何世紀にもわたって物理学者が学んできた他の秘訣の真似をするAIシステムだ。「AI物理学者」と呼ばれるこのAIシステムは、私たちの世界の複雑さを模倣して慎重に構築した不思議な世界を支配する物理法則を引き出すことができる。
ウー助手とテグマーク教授は、現在のAIシステムの重大な弱点を特定することから始めた。現在のAIシステムは一般的に、大きなデータセットを与えると、全てを支配する単一の理論を探そうとする。しかし、データセットがより大きく複雑になると、その作業はより困難になる。
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