初めに本があった。それからアマゾンは、音楽、小型電子機器、家庭用品などを売り始め、今では店で買えそうなものなら何でも扱うようになった。小売り業の領域に途方もなく広がったその品揃えが、人々が何よりも価値以上のあるもの(それは価値そのものでもあることが判明した)を消費者に提供することで、ビジネスを食い尽くしてまった。あるものとは、便利さだ。
そして今、そのことをはっきりさせるように、アマゾンは、コンビニエンス・ストア業界に襲いかかろうとしている。
実店舗で本を売るビジネスを破壊しておきながら、結局は自社ブランドの実店舗を構えたアマゾンが、今度は食品小売り業界を混乱に陥れようとしている。私たちが口にするものを売るビジネスを食い尽くすための、さらに規模の大きな企ての一環だ。
もちろんAmazon.comはすでに多くの魅力的な食品を扱っている。とはいえ、食料品店に比べればその品揃えは格段に限られており、特に生鮮食品は不足している。ウォール・ストリート・ジャーナル紙が指摘するように、アマゾンプライムのアカウントを持つ会員がアマゾンで1年に消費する額は約2500ドルで、これはアメリカの一般家庭が食品小売り店で1年に消費する5500ドルの半分を少し下回る額だ。
食料品市場はとてつもなく大きい。米国最大の食品小売り業者であるウォルマートでも食い尽くせないほど巨大だ。ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、ウォルマートの2016年食品売上高を1400億ドルと見積もっており、アマゾンはその一部を欲しがっているわけだ。
食品小売り業はマージンの低いビジネスであり、競争相手がひしめき合っている。たとえばウォルマートは、オンラインでの注文に乗り出しており、消費者は街角のドライブスルーで商品を受け取れる。アマゾンはここ何年か、「アマゾンフレッシュ」サービスで食品の宅配を実験してきた。ウォール・ストリート・ジャーナル紙の記事は、アマゾン社内の匿名の人物の言葉を引用し、アマゾンは食品を自社の新店舗でドライブスルーで受け取る方法と、自宅への即日配送とを組み合わせた方式を導入しようとしているという。
だが、おそらくアマゾンは、消費者にりんごを売って儲けようとは考えていない。アマゾンの食の支配計画は、消費者を店に呼び込み、その買い物習慣を記録し、再来店率を上げ、さらに利益率の高い商品の購買につなげるためにある。もし計画がうまくいけば(さまざまな即日宅配サービスが以前から実施されていることも念頭に置いてみよう)、非常に便利なサービスになるだろう。
(関連記事:Wall Street Journal, “Walmart’s Robotic Shopping Carts Are the Latest Sign That Automation Is Eating Commerce,” “Amazon’s Algorithms Don’t Find You the Best Deals”)