数年前、米国国家情報局(NSA)に契約社員として勤務していたエドワード・スノーデンによる機密文書の漏洩で、情報機関がどのようにスパイ活動を行なっているかが明らかになった。われわれが驚かされたことの1つは、スパイたちが光ファイバー・ケーブルを流れる膨大な量の情報を監視していたという事実だった。
スノーデンが暴露した事実によって、通信ケーブルからのハッキングを不可能にするために、量子科学というまだほとんど解明が進んでいない領域への研究を加速させようとする気運が高まっている。
スタートアップ企業のクアンタム・エクスチェンジ(Quantum Xchange)は、米国東海岸沿いに500マイル(約805キロメートル)に渡って結ばれた光ファイバー・ケーブルへのアクセスを可能にする許可を得た。これによって、米国初の量子鍵配送(Quantum Key Distribution:QKD) ネットワークを作り上げることになるという。
さらに、シカゴ大学アルゴンヌ国立研究所とフェルミ国立加速器研究所が、量子テレポーテーションを利用してデータ・コミュニケーションの安全確保を試みる、テストベッド(実証試験用プラットフォーム)を構築する合弁事業を発表した。
クアンタム・エクスチェンジによるQKDのアプローチでは、情報を従来のようにビットで符号化して送信するが、その復号に使われる復号鍵は量子ビット(キュービット)の形態で送られる。これらは、通常は光子(光の粒子)であり、光ファイバー・ケーブルで難なく伝達できる。このアプローチ …