四つんばいになって、ダンボールを切り取った窓を抜けて仲間の元へ這っていき、温和な見た目のモンスターが待ち受けるリビングルームへと出た。オキュラスVRから発表された新しいVRゴーグルの試作機を数分間体験すると、オキュラスのフラグシップモデルであるオキュラス・リフトとは違い、パソコンとコードで接続しないことの利点がわかってくる。
オキュラスVRがコードレス設計を実験しているのは、実質現実(VR)を大衆市場で訴求するには、コードレス化が必要不可欠だと考えているからだ。
2014年にオキュラスVRを買収したフェイスブックのマーク・ザッカーバーグCEOはコードネーム「サンタクルーズ」の試作機を木曜日に公開した。カリフォルニア州サンノゼで年に一度開催される開発者向けカンファレンスオキュラス・コネクトで講演したザッカーバーグCEOは「スタンドアロン」設計はオキュラス・リフトのような高価なゴーグルとサムスンのGear VRのような安価な製品との中間に位置すると語った。オキュラス・リフトは高価なパソコンに接続する必要があり、Gear VRはスマートフォン用に設計された製品でパフォーマンスに限界がある。
サンタクルーズの設計で最も目を引くのは、ユーザーの周囲の世界を観測し、空間位置を追跡する4つのカメラを内蔵していることだろう。デモの体験時間は短かったが、ステージとなったリビングルームを歩き回り、色とりどりのダンボールのバーチャル世界を探検したとき、ゴーグルは、壁に近づきすぎだと警告を発した。
オキュラス・リフトもユーザーの位置を追跡できるが、サンタクルーズほど自由を満喫できない。オキュラス・リフトはユーザーをパソコンのコードでしばりつけるだけでなく、ユーザーの前方にある机や棚の上に特別なセンサーを設置する必要がある。HTCのViveも似たような設計だ。低価格なGear VRや、近日発売されるグーグルのデイドリームはユーザーの位置を全く追跡しないため、空間内でできる動作は首を振ることだけだ。
サンタクルーズはオキュラス・リフトの改良版であり、ディスプレイ以外の機能はバンドの後方にまとめられている。オキュラスは内部に何があるのかを正確に説明しようとしないが、サンタクルーズの開発に携わるメンバーの1人は、この装置の部品はスマホの中味と似たようなものだという。
ザッカーバーグCEOは6日、実質現実はスマホと同じ現象を引き起こすという自身の予想を繰り返し述べ、いつの日か10億人のユーザーが日常的にこのテクノロジーを利用しているのを目の当たりにするだろうと話した。
オキュラスのマックス・コーエン副社長(モバイル部門担当)はMIT Technology Reviewに対し、サンタクルーズの設計はザッカーバーグCEOの目標を達成する道のりの可能性を示したと話した。
「スタンドアロン型のゴーグルは、ユーザーを10億人の1人にする最も効果的な方法だと考えています」
インテルとクアルコムは最近、自社のコードレスゴーグルを大々的に発表したが、両社のゴーグルはあまり高度には見えず、利用可能なデモは今のところ制限されている(「VRゴーグルはコードレスがいい」参照)。コーエン副社長は、VR産業全体が今後スタンドアロン(「一体型」ともいう)ゴーグルの設計に集中するかもしれないという。
サンタクルーズがいつ製品化されるのか、コーエン副社長はコメントを断った。ザッカーバーグCEOは壇上でサンタクルーズの試作機を初めて紹介した時、製品化までは時間がかかると述べた。
「製品化にはまだ至りません。あまりにも期待を高めることはしたくないのです。デモを示しはしましたが、まだ製品化の段階ではありません」