ある種の投資家にとって、小惑星資源の採掘は莫大な富への道だ。白金や水など、他では希少な資源が小惑星に豊富にあることは天文学者の間で長く知られている。それらを採掘して地球に持ち帰ればいいのは明白だ。水の場合は、月面基地や地球を周回する宇宙ステーションに持ち帰ることになる。
この手のベンチャー企業への関心は尽きることがない。過去10年間で投資家たちは、付近の様々な小惑星に狙いを定めた6つの会社に投資している。そのようなミッションにゴーサインが出されるのは時間の問題だというのが、大勢の見方だ。
しかし、そこから得られる利益は全体像の一部に過ぎない。これらのミッションから考えられるさらに重要な側面として、地球環境への影響が挙げられる。にも関わらず、小惑星資源採掘が環境に与える影響を詳細に評価した研究はこれまでなかった。
今日、フランスのパリ・サクレー大学のアンドレアス・ハイン博士らの研究のおかげで状況が変わった。ハイン博士らは小惑星で資源を採掘した場合の温室効果ガスの排出量を計算し、地球上で同様の活動をした際の排出量と比較した。その結果からは、小惑星採掘がもたらす恩恵について驚くような知見が得られた。
計算自体は比較的単純だ。ロケットの打ち上げでは、大気中に大量の温室効果ガスが排出される。ロケットの1段目に搭載される燃料は地球の大気圏で燃え、二酸化炭素を生成する。ケロシンを燃やすロケットの場合、燃料1キログラムから二酸化炭素が3キログラム生み出される(2・3段目の燃料は大気圏外で燃やされるため、無視できる)。
大気圏への再突入も同様に有害だ。機体が地球 …