DNA検査会社のカラーゲノミクス(Color Genomics)は、心臓発作のリスクの有無が分かる新しいタイプの遺伝子分析を来年初めにも顧客に提供するという。
しかし、この検査には問題がある。白人に対してしか有効でないのだ。
多遺伝子リスクスコアと呼ばれる新しいタイプのDNA分析は、がん、糖尿病、動脈血栓などさまざまな重大疾患のリスクを予測できる。MITテクノロジーレビューが選出した2018年版ブレークスルー・テクノロジー10にリスト入りするほど、大きな進歩と言えるテクノロジーだ。
だが、このアルゴリズムは、ほとんどの部分が、ヨーロッパ人を近い祖先に持つ人の健康状態とDNAデータに関する大規模データベースを用いて開発された。そのため、黒人、ヒスパニック系、アジア系など他のグループに対してそれほど正確ではない。
サンフランシスコ近郊に拠点を置くカラーゲノミクスのような企業にとって、これはジレンマとなる。
「一部の人々にしか製品を提供できないのは不公平であり、医学分野で容認できることではありません」とカラーゲノミクスで研究を率いるアリシア・チョウは述べる。一方で、この検査は一部の人には有効であり、今現在、実際に命を救える可能性がある。「メリットを受けられるはずの人々からデータを隠しておく」のも間違っているとチョウはいう。
問題を解決するためにカラーゲノミクスは、少数民族も含めて5万人分の遺伝子データを公開したと説明する。同社は、他の科学者らがこのデータを使うことで、すべての人種に対して有効なリスクスコアの開発が促されることを望んでいる。「5年以内には成果が出てほしいと考えています」。
従来の遺伝子検査は、疾患の原因となる単一遺伝子に治して突然変異を詳細に調べるが、新しい検査手法である多遺伝子リスクスコアは異なった方法を用いる。単一遺伝子を調べるのではなく、ヒトゲノムの中の多くの(通常約50万カ所)測定値を考慮して総合スコアを作成し、この総合的な結果を基にリスクを判断する。
問題は、このスコアを準備するために利用したバイオバンクが格納しているDNAが、主に、ヨーロッパ系の人のものだということだ。2016年時点で、一連の大規模科学プロジェクトに参加した3500万人のうち約80%がヨーロッパ系であり、ヒスパニック系はたった1%であった(「DNAデータベースの白人偏重は何が問題なのか?」を参照)。
…