分子コンピューティングへの一歩、DNA回路の挙動を実証
シカゴ大学の研究者が、生体細胞が環境を感知したり、感知した情報を伝達したりする際に使用する分子信号の変化を測定する方法を開発し、分子回路の挙動をシミュレーションで実証した。将来的には、細胞から特定パターンの信号を受け取ったときにだけ薬剤を送達するDNA折り紙の錠剤などへの応用が考えられる。 by Emerging Technology from the arXiv2018.10.23
生体細胞が複雑な信号システムを使って環境を感知したり、感知した情報を内部や周辺に送ったりしていることは科学者の間では以前から知られている。この信号システムには、特定のシグナル伝達分子、同分子の濃度、濃度の経時変化といった要素が組み込まれている。
原理は単純だが、システムは極めて強力で複雑であることが分かっている。そのため、信号を解読するのは難しい。問題の1つは、シグナル伝達分子を見つけたり、その濃度変化の様子を測定したりすることの困難さにある。
たとえば、ガンマ線により哺乳類の細胞が傷付けられると、核内タンパク質p53の放出が促される。この際のp53は多くの高速パルスで放出され、細胞の活動を止め、損傷を調べることを促す。この過程は「細胞周期休止」と呼ばれる。
これに対し、紫外線放射では長めの単一パルスが発生し、即座に細胞死が引き起こされる。しかし放出されるp53の総量は、双方の場合で同じことがある。
現代の分子センサーはこの違いを区別できない。それはモールス信号の受信機でラジオ番組を聴くようなものだ。送信機が稼働しているかどうかは分かるが、番組の内容は分からない。
そのため、生物学者たちはこれらの分子信号を測定する優れた方法を切実に必要としている。
シカゴ大学のジャクソン・オブライエン研究員とアルビンド・ムルガン助教授の2人は、強力な分子コンピューティングの手法を使って分子信号の変化を測定する方法を開発した。2人のアプローチは、分子のシグナル伝達を調査・探究するための新たな方法の構成要素を生成し、「アナログの分子コンピューティングによる時系列パターン認識の基礎となるもの」という。
オブライエン研究員とムルガン助教授の研究を支える新たなテクノロジーは、合成生物 …
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