アイフォーン(iPhone)や靴のように、1つの製品を何千個も何万個も大量生産するような工場なら、すぐに組み立て作業の熟練工になれるだろう。だが、もし宇宙船を組み立てるとなると、そう簡単にはいかない。
「何かを製造するたびに、ほぼ毎回、初めての作業になる」(ロッキード・マーチンのブライアン・オコナー製造統括責任者)からだ。
航空宇宙産業ではこれまで、数千ページにも及ぶ紙のマニュアルを使って、従業員へ作業内容を指示伝達してきた。近年ではボーイングやエアバスといった企業で拡張現実(AR)を使った実験が始まったものの、試験段階より先に進むことはほとんどない。だが、少なくともロッキードでは状況は変わりつつある。同社の従業員は1日も欠かすことなく、ARを使って仕事をしているのだ。
宇宙船技術者のデッカー・ジョリーは、計画が何度も延期されているNASAの超大型ロケット「スペース・ローンチ・システム(Space Launch System)」に搭載される予定の有人宇宙船「オリオン(Orion)」の作業工程で、マイクロソフトのヘッドセット「ホロレンズ(HoloLens)」を毎日使っている。
「1日の始まりに、これから自分がやる予定の作業に慣れてお …