だが、心配は無用だ。ロボットの進歩は止まらない。
より賢くて利用しやすいロボットの開発にいち早く取り組んでいたリシンク・ロボティクス(Rethink Robotics)が事業停止を予定しているというニュースは、ロボット工学と人工知能(AI)にとって悪い兆しに思えるかもしれない。しかし、実態はもっと複雑だ。
リシンクのスコット・エッカートCEO(最高経営責任者)がボストン・グローブ(Boston Globe)紙に語ったところによると、予想したほどにロボットの売上が振るわず、資金不足に陥ったという。だが、リシンクの命運は、ロボット産業全体の傾向とは相反しているようだ。実際のところ、ロボット業界は好景気に沸いている。業界団体の国際ロボット連盟(International Federation of Robotics)が発表した最新の統計によれば、2017年の世界全体のロボット売上高は前年に比べて31%増加したという。新記録である。
世界中の製造業企業が、労働力不足を補うために、より多くの作業を自動化しようとしている。一方では、電子商取引大手が、商品の仕分け、梱包、加工を自動化する新たなアプローチを追求している。だが、いい話ばかりではない。ロボットを導入している企業を実際に訪ねてみれば、ほとんどのロボットは大して賢くもなく、使いやすくもないことに気がつくだろう。ロボットは正確に、休みなく仕事をこなすことができる。しかし、現実世界の複雑さに対してすぐに混乱をきたしてしまうし、大抵はプログラミングに大変な手間がかかる。
リシンクは安全かつ非常に簡単に利用できる2種類のロボット、「バクスター(Baxter)」と「ソーヤー(Sawyer)」でこうした状況を変えようとした(「リシンク、人間の隣で動作しても安全なロボットの最新版を発表」を参照)。これらのロボットは、人間が実際に動かして作業をさせることで、たとえば物体をベルトコンベアから持ち上げ …