米国でいま、風力発電がにわかに活気づいている。
米国における風力発電の割合は現在、2000年比で35倍に拡大しており、国の電力供給の8%を占める。米国エネルギー省は、風力タービンによる発電能力が2050年までに、現在の4倍以上になると見込んでいる。
しかし、ハーバード大学の2人の研究者による新たな研究により、大量の風力発電が少なくとも今後直近の10年間、局所的には温暖化を促進する可能性があることが明らかになった。この研究論文は、クリーンな電力システムを確立するために、風力発電にどの程度頼るべきなのか、という重大な問題を提起している。
学術誌『ジュール(Joule)』に発表された今回の研究結果によると、仮に風力発電で米国の電力需要をすべて満たそうとすると、米国大陸部の表面温度が0.24℃上昇するという。21世紀に入って米国内の電力部門を脱炭素化する取り組みで達成した、約0.1℃の温暖化減少分をゆうに上回る数字だ。
「今後10年に目を向けると、風力発電は実際にはいくつかの点で、石炭や天然ガスよりも気候に対して大きな影響を与えます」と、ハーバード大学で応用物理学と公共政策の教鞭をとり、論文の共同執筆者であるデビッド・キース教授は述べる。「もし今後1000年を考えるのなら、風力発電は石炭や天然ガスよりもはるかにクリーンなエネルギーです」。
具体的には、今回の研究のシナリオによると、化石燃料を排除することによって達成される「回避される温暖化」は、排出削減が積み重なるにつれて、風力発電を原因とするおよそ1世紀に …