米国の脅威は中国ではない、
「基礎研究の軽視」だ
元グーグル副社長語る
中国の著名な投資家兼起業家であるカイフ・リー(元グーグル副社長)が、米国と中国の人工知能(AI)開発競争に関して、MITテクノロジーレビューに語った。米国にとっての本当の脅威は、中国ではなく、基礎的なAI研究が後回しになっていることであり、AIの優秀な人材が産業界に吸い上げられていることだという。 by Will Knight2018.10.09
北京に拠点を置く著名な投資家であり、起業家でもあるカイフ・リー(李開復)は、中国の人工知能(AI)の今後の可能性について語った後、 米国に向けたメッセージを述べた。リーによると、AI分野における米国の卓越性に対する真の脅威は、中国の台頭ではなく、米国政府が現状に満足してしまうことだという。
完全に公平な視点からではないにせよ、この問題を理解するにあたってリーは適任だ。というのも、同氏は1980年代にカーネギーメロン大学(CMU)で機械学習を研究し、1990年代には中国のマイクロソフト研究所を牽引。2000年代にはグーグルの中国進出で陣頭指揮を執っているのだ。現在、リーは、北京に拠点を置くAIに焦点を当てたインキュベーターであるシノベーション・ベンチャーズ(Sinovation Ventures)を率いている。中国と米国におけるAIの急激な隆盛を綴った書籍「AIスーパーパワーズ(AI Super-Powers)」の著者でもある。
リーによると、米国の本当の脅威は、中国との競争ではない。むしろ基礎的なAI研究に投資がなされず、後回しになっていることにあり、問題は悪化し続けていると語る。米国の大手企業が、AI分野の多くのトップ人材の多くを取り込んでしまっているからだ。一般的に、テック企業は学術界ほど基礎的なブレークスルーに重点を置かない。学術界は企業との研究者確保争いに悪戦苦闘中だ。
大きく考える
「米国は、現在の技術では解決不能な本当に大きな課題に挑戦すべきなのです」とリーはMITテクノロジーレビューに語った。データから学習する大規模な人工ニューラル・ネットワークを用いた深層学習技術が驚くほど進化したことが大きな契機となり、AI分野への関心が再燃している。しかし、深層学習には膨大な量のデータが必要で、狭い領域でしか機能しない傾向がある。「深層学習の限界を克服するには、次世代の一連の技術が必要です。営利企業がこの手の取り組みに重点を置くことはないでしょう」。
おそらく、AI開発競争に中国は勝つだろう。活気あふれる中国のテック業界は、すでに驚くべき速さでAIを取り込んでいる。中国政府は2017年に、同国のAI産業を発展させるための広範な計画を発表した(「国家レベルでAIに賭ける中国から何を学ぶべきか」を参照)。 一方、米国政府は、AI産業の発展については自国の強固なテック業界にゆだねており、放任主義を採ってい …
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