米で再生可能エネが本格普及
手段が目的化してないか?
再生可能エネルギーのコストが低下し、利用が増えたのは喜ばしいニュースだが、何かを達成したわけではない。最終目標は地球温暖化の抑制だ。 by Jamie Condliffe2016.10.04
米国エネルギー省が発行した最新の報告書によると、再生可能テクノロジーにかかるコストは大幅に低下しており、同時に再生可能テクノロジーの利用は急激に増加している。よいニュースだが、無関心ではいられない。
「米国連邦政府やエネルギー業界が何十年にもわたって投資してきた5つのクリーンエネルギーテクノロジーの効果がようやく出始め」、「陸上風力発電、送電網、分散型太陽光発電、発光ダイオード、電気自動車のコストは、2008年以来41〜94%も低下している」と報告書は説明している。
結果として、再生可能テクノロジーの利用は急激に伸びた。洋上風力発電の発電量は、2015年に12%上昇し、実際、発電量は昨年米国で新設された発電所の発電量全体の41%を占める。規模は小さいが、太陽光についても似たような話がある。
あらゆる指標で最も目立つのは、急激に活用が増えた発光ダイオード(LED)かもしれない。米国内での導入数は、前年に比べて2015年は2倍以上増加した。
再生可能テクノロジーに関するこうした変化は、すべてよい兆候だ。劇的な変化がエネルギー生産設備に起きなければ、COP21 パリ協定で設定された目標を達成できる見込みはなく、温暖化による地球への影響を減せない。しかし再生可能テクノロジーのコストが急激に低下したり、2〜3年という短期間で利用が進んだりしても、地球温暖化の進行を防げるとは限らない。
MIT Technology Reviewのテキサス州の風力発電ブームに関する分析記事でもわかるように、急激な変化が起きても持続可能な成功を予測したことにはならない。もしテキサスが州ではなく、ひとつの国なら、世界で6番目に大きな風力発電設備を備えた国になっただろう。しかしテキサス州の功績は、再生可能エネルギーの限界と可能性を示している。テキサス州は送電網の更新に莫大な額を投資しており、強力な風を安定して得られる自然環境に恵まれたのだ。その他の州では、風力発電の活用は難しい。
急激に低下するコストの問題について、特に太陽光発電ブームはどちらかといえば実際はバブル状態ではないかという意見もある。太陽光発電の設置費用は確かに低下を続けているが、政府の補助金によってエコシステム全体が支えられているから、費用が低下しているように見えるだけかもしれない。多くの州では、NEM方式(電気の消費量が自然エネルギーの発電量を上回った分だけを支払う仕組み)の廃止を検討中であり、そうなれば、太陽光発電市場は再び成功するかもしれない。
確かに、再生可能エネルギーのコストが低下し、そのぶん利用が増えているのは非常に刺激的な話だ。しかし、そのような変化を確実に維持していく必要があるような、長期的な課題を見失ってはいけない。
(関連記事:Revolution … Now, “Suddenly, the Solar Boom Is Starting to Look like a Bubble,” “Battles Over Net Metering Cloud the Future of Rooftop Solar,” “The One and Only Texas Wind Boom”)
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- ジェイミー コンドリフ [Jamie Condliffe]米国版 ニュース・解説担当副編集長
- MIT Technology Reviewのニュース・解説担当副編集長。ロンドンを拠点に、日刊ニュースレター「ザ・ダウンロード」を米国版編集部がある米国ボストンが朝を迎える前に用意するのが仕事です。前職はニューサイエンティスト誌とGizmodoでした。オックスフォード大学で学んだ工学博士です。