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Meet the winner of robotics’ World Cup

「もう1つのW杯」で見えた、人型ロボットの進歩と課題

ロシアで開催されたサッカー・ワールドカップ大会に人々が熱狂していたちょうどその頃、地球の反対側ではロボットたちによるサッカー大会「ロボカップ(RoboCup)」が開催されていた。人型ロボット大人サイズの部で2年連続で優勝したロボット「ニンブロ」からは、ロボット工学の著しい進歩と改良点が見える。 by Emerging Technology from the arXiv2018.10.12

今年のワールドカップの勝者は、ドラマチックな決勝戦でクロアチアを倒した強豪フランスチームだ——。もしそう思っているなら、あなたが見ていたのは違うワールドカップだ。

ちょうど同じころ、地球の反対側のモントリオールで、もう1つのワールドカップが開かれていた。大人サイズのロボットによるサッカーのワールドカップだ。優勝したのはNimbRo(ニンブロ)という名のロボットで、2年連続の優勝となった。ニンブロは長い歴史を持つサッカー強豪国、ドイツ代表のロボットだ。

この記事では、ニンブロを作り出した人々が、この電動ヒーローの設計に当たって自分たちが直面した困難のいくつかについてのあらましを紹介する。ニンブロは元々、2017年のロボカップ名古屋大会のために同チームが設計した初の大人サイズのロボットである。彼らの取り組みによって、ロボット工学が著しく進歩している一方で、今後数年間で大きな改良の余地があることが示された。

Spot the robot: The 2017 World Cup’s winning team
ロボットに注目。 2017年ワールドカップ優勝チーム

まず背景を少し説明しよう。ロボットによるサッカーのワールドカップである「ロボカップ(RoboCup)」は、ロボット工学、マシン・ビジョン、タスク・プランニングなどに関するさまざまな新技術をテストする1つの場として1997年に始まった。

ロボットによるワールドカップと聞いた多くの人は一般的に、見応えがあるとは言い難いプレーをする「選手」たちの試合を想像するだろう。ロボットの不器用でよろよろした足取り、滑稽な混乱、指の透き間からこわごわ試合を見る人間の主人たちの不安げな表情などだ。

サッカーをするようなロボットは一般的に、非常に小型で、人型でさえない場合も多い。大きなマシンに電力を供給したり、操縦したりするのが難しいからだ。二足歩行タイプのロボットは特に難しい。いずれにせよ二本の脚で歩き、走り、蹴ることは、サッカーを自動化するためにロボット工学が解決すべき多くの課題の一部にすぎない。

しかし昔に比べると、人工知能(AI)とロボット工学は急速に進歩している。機械がチェスや囲碁、それからアタリのいくつものビデオゲームと同様に、サッカーに熟達しているであろうことはたやすく想像できる。

だが、実際にはそれほどでもない。最近になり、よりパワフルで効率的なアクチュエーターが登場することで、ワールドカップ・スタイルの大会で張り合える大人サイズのロボットの設計が実現可能になったのだ。ここで紹介するニンブロは、ドイツのボン大学のグジェゴシ・フィヒトとその同僚たちが2017年の大会用に作った二足歩行式ロボットだ。製作には6カ月もかかっていない。

ロボカップに出場する大人サイズのロボットの高さは、130センチから180センチでなければならない。ニンブロは高さ135センチ、重さ18キロだ。大会では1対1の一連の試合の後に決勝戦が実施され、最も多くのゴールを決めたプレイヤーが勝利する。動くボールを蹴ったり、ジャンプしたり、押されてから体勢を回復したりするなどの技術チャレンジもある。

ニンブロにはこのようなタスクを特に上手にこなすための多くの機能がある。また、とりわけシンプルで、メンテナンスや交換を容易にしている。「ロボットの構造をできるだけ簡単にして、複雑さを排除しつつ、サッカーをするのに必要な機能は保持しています」とフィヒトらはいう。

外骨格は3Dプリントされたナイロン製のシンプルなパーツだけで成り立っている。「3Dプリントの多用途性を活かすことで、手頃なコストで、カスタマイズ可能で、非常に能力の高い大人サイズの人型ロボットを短期間で開発できました」とチームは語る。

部品のほとんどに対称性を持たせて、複数の箇所に使用できるようにしている。これにより、必要な予備の部品の数を減らしている。

ビジョンにはロジテック(Logitech)C905カメラ1台を使う。視野角は150度だ。データはロボットに搭載されたインテルNUCミニPCで処理され、物体検出、ロボットの位置特定、タスク・プランニング、アクチュエーターの制御を実行する。

これらの機能により、ロボットはサッカーをするのに必要な多くの能力を実現している。ロボットはボールの位置を特定して近づき、他のプレイヤーなどの障害物を避け、キックやドリブルができなければならないのだ。

ニンブロはうまくプレーする。5試合で46ゴールを決めた。失点は、スウェッティ(Sweaty、汗まみれ)というずいぶん飾らない名前のロボットが相手の決勝戦における1点だけだった。ニンブロは技術チャレンジでも21ポイントを獲得して圧勝した。「2017年のロボカップ名古屋大会で私たちのロボットはとてもうまくプレーし、大人サイズのサッカー・トーナメントで高得点で優勝しました」とチームは述べている。そして今年6月、ニンブロはモントリオールでチャンピオンの座を守った。

ニンブロは、ロボットが比較的複雑な課題をどれほどこなせるようになったかを示す面白い研究だ。だが多くの改良すべき点がある。

信頼性の高いバランス能力はそうした課題の一つだ。試合を見ると、それぞれのロボットのすぐ後ろに人間がついて回っていることに気づくだろう。これはロボットがバランスを崩した時に支えるためである。そうして不要なダメージを回避するのだ。だが転んでまた立ち上がる能力は、サッカーの試合には(そしてその他の多くの状況でも)不可欠だ。

ロボットたちは、動きが特に素早かったり滑らかだったりするわけでもない。猫背で足を引きずっていると言うのが一番合っている。サッカー能力はせいぜい初歩的だ。これらのロボットはどのような能力においても人間に敵わない(2017年大会のハイライト)。

それが急速な改良が期待される理由だ。よりうまくバランスをとって、歩いたり走ったりできる大人サイズのロボットが確かに存在するのは、ボストン・ダイナミクスの映像を見た人なら誰でも知っている。

このようなロボットは、ニンブロにとって、ずっと手強い相手となるだろう。それがサッカー場にやって来るのは時間の問題だ。

(参照:arxiv.org/abs/1809.04928 : Grown-up NimbRo Robots Winning RoboCup 2017 Humanoid AdultSize Soccer Competitions:成長したニンブロ・ロボットが「RoboCup」2017年大会の人型ロボット大人サイズの部で優勝)

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