大手テック企業の派手な予測や実証実験(実はドローンに有利な条件になっている)に騙されてはいけない。ドローン宅配はずっと先の話だ。
MIT Technology Reviewの3月掲載の記事で、ドローンによる宅配サービスは当分先だと書いた。その後施行された米国の新規制により、ドローンの商業利用は認められたが、まだまだ大きな制限がある。たとえば、当局の許可がなければ群衆の頭上や操縦者の視界を超えた範囲には飛ばせない。
たとえ規制が緩和されても、ドローン宅配の普及には、未解決の課題が多く残る。たとえばセキュリティや空域の管理、信頼性の問題、それに比べれば小さなことだが「配達先に到着したドローンが何をするか」も決まってない。
だが、宅配ドローンの利用方法は次から次へと現れる。アルファベット(グーグルの親会社)はファストフード店「チポトレ」のブリトー(メキシコ料理のひとつ)を「プロジェクト・ウィング」の機体でバージニア工科大学のキャンパス全域に届けている。UPS(米国の郵便局)はドローンによる医薬品配送を試験中だ。メルセデス・ベンツはドローンメーカーのマターネットと共同で移動式の物流拠点になる自動車をドローンの「母艦」として設計中だ。
ドローンを物流に使うアイデアはある意味合理的だ。ドローンによる宅配網を構築すれば、迅速かつ効率的に配送できるようになり、交通渋滞が減少して二酸化炭素の排出量削減にも貢献するだろう。
だが、ドローン宅配の強力な支持者であっても、実現までには相当な時間がかかることは認めざるをえない。ウォール・ストリート・ジャーナル紙のインタビューで、ドローン宅配の有力企業であるマターネットのアンドレアス・ラポトポウラスCEOは「空輸宅配便に何か起きるとすれば2020年ころです」と述べたのだ。
さらに同記事では、米国連邦航空局(FAA)が作成中の衝突回避基準(ドローン宅配網の実用化に欠かせない)のドラフト版完成までに「3,4年」かかりそう、とも示している。ウォール・ストリート・ジャーナル紙によれば、衝突回避システムが利用する米国航空技術諮問機関(RTCA)が開発中のセンサーの完成は「おおむね2020年中」だという。
以上の点をすべてまとめると結論はひとつだ。買い物の配達方法を選ぶとき、よほどの忍耐力がなければ「ドローン」を選んではいけない。
(関連記事:Wall Street Journal, “Sorry, Shoppers: Delivery Drones Might Not Fly for a While,” “米、ドローン規制を29日緩和 日本はチャンスを潰すのか?,” “物流網を劇的に効率化する 配達ドローンと母艦トラック,” “ドローンでブリトー配達実験 グーグルさん、本気ですか?”)