リチウムイオンはなぜ 優位であり続けるのか? 材料科学者が語る理想と現実
持続可能エネルギー

Why lithium-ion may rule storage technology for a long time to come リチウムイオンはなぜ
優位であり続けるのか?
材料科学者が語る理想と現実

米国でコバルトをほとんど含まない新世代のリチウムイオン電池を開発する3年のプロジェクトが立ち上がる。同プロジェクトの核となる正極の代替物質の開発を指揮するローレンス・バークレー国立研究所のシダー教授に、現在の課題や今後の展望、研究室の成果が市場に出るまでに非常に時間がかかる理由などを聞いた。 by James Temple2018.09.28

米国エネルギー省が、コバルトをほとんど含まない新世代のリチウムイオン電池の開発を目指した大規模な研究プロジェクトを立ち上げようとしている。背景には、高価なレアメタルであるコバルトを調達するサプライチェーンが最近、ますます厄介な状態になっていることがある。

3年にわたる計画を実施し、最終的に、消費者向けガジェットや電気自動車、送電網向けのより安価で長持ちする蓄電池の開発につなげたい考えだ。

研究の取り組みの一環として、ローレンス・バークレー国立研究所の材料科学者であるゲルト・シダー教授が、二次電池の正極(カソード)の代替物質として「不規則岩塩」を開発するプロジェクトを監督する。数年前、シダー教授らの研究チームは、不規則岩塩型の正極材料が、より多くのリチウムを蓄え、エネルギー密度を高めながらコバルトを完全に排除できる可能性があることを発見した(「Disordered materials hold promise for better batteries」を参照)。

MITテクノロジーレビューとのインタビューの中でシダー教授は、新材料が電池製造において「ドロップイン」式の代替材料として使えるようにするための課題、今後長い間リチウムイオン技術が蓄電の分野で優位であり続ける理由、電池の技術的進歩が市場に届くまでに非常に時間がかかる理由について語った。

(このインタビューは、スペースの都合および、内容を明確にするため、編集されています)。

——この新たな化合物の開発における次のステップは何ですか?

このコンセプトが最初に発見されてから約4年が経ちますが、このカテゴリーの十数種類以上の化合物がすでに有望な特徴を示しています。現在は、ルイス・クラーク探検隊(19世紀初頭に北米大陸西海岸への陸路を探検した米国の探検隊)のように、研究者たちがあらゆる化学的な実験をしている発見段階といえます。

実際に商品を製造できるようになる前に、有望と思われる材料のいくつかについて、解決すべきあらゆる小さな問題を解決できるかどうかを確かめることが、次の段階になります。

充放電能力は高くなければなりませんし、電池の寿命を決めるサイクル寿命を向上させる必要があります。

それから、さまざまな加工方法や表面処理を開発していきます。そうするこ …

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