100年ぶりのイノベーション、新方式の「原子ラジオ」が登場
ミシガン州のスタートアップ企業が、従来とはまったく異なる仕組みのアンテナを考案し、音声で変調した電波を受信できることを実証した。レーザーを用いて、特定の状態にある原子気体に対する電波の影響を検出する仕組みだ。幅広い周波数をカバーし、電磁妨害に強いラジオ受信機を作成できる可能性がある。 by Emerging Technology from the arXiv2018.09.12
ラジオのアンテナの基本構造は100年間変わっていない。通常は、受信しようとする電波の波長のおよそ半分のサイズの金属棒のセットだ。金属棒を通過する電波の電界が内部の電子を加速し、電波のエネルギーを微小な電流に変換するので、その電流を増幅する仕組みである。
だが物理学者たちは、より高性能かつセキュアなアンテナ作りの研究に熱心だ。たとえば、単純なアンテナで広い範囲の波長を受信できたり、電磁妨害への耐性が上がったりするのはよいことのはずだ。
そこで登場するのが、ミシガン州アナーバーにあるリュードベリ・テクノロジーズ(Rydberg Technologies)でCEO(最高経営責任者)を務めるデビッド・アンダーソンだ。アンダーソンCEOは同僚らともに、新型のアンテナをゼロから考案した。従来のアンテナとはまったく異なり、レーザーを使って、無線信号が特定の原子と相互作用する様子を測定する仕組みである。
カギとなるのはリュードベリ原子だ。アンダーソンCEOらの新しいアンテナは、外殻電子が大きく励起し、原子核からの軌道が遠い状態(「リュードベリ状態」と呼ぶ)になっているセシウム原子を使う。そのような軌道にある電子は位置エネルギー準位がかなり密集しており、特別な性質が現れる。小さな電界でも、電子を別のエネルギー準位に遷移させられるのだ。
電波は交流電界で構成されており、電界はリュードベリ原子に出会うと簡単に相互作用する。つまり、原子が電波のセンサーとして使える可能性がある。 …
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