ダムを建設して水から電力を作ることは、考えるまでもなく再生可能エネルギーに思える。だが、ダム建設の結果生まれる貯水池は、想像するよりも気候への悪影響がありそうだ。
来週発行予定の論文誌バイオサイエンス誌に掲載されるワシントン州立大学の研究によると、ダムによって形成された貯水池は、単位面積当たりのメタンガス排出量が想像以上に多い。サイエンス誌によれば、液体の水から放出されるメタンガスは、二酸化炭素のように水から放散するのではなく、気体が泡として水面に出てくるため、他の気体より測定が難しい。
しかし、メタンの気泡を測定する新手法により、ワシントン州立大学のチームがより正確な放出速度を計算した。その結果、貯水池は以前に考えられていたより25%も多くメタンを排出することが判明した。25%ならそれほど多くはなさそうだが、温室効果ガスとしてのメタンは、二酸化炭素より約30倍も強力であることと合わせると、少量であっても大きな影響があるとわかる。
一方、世界では、水力発電所を新設が相次いでいる。昨年発行の論文誌『アクアティック・サイエンス』掲載の論文によると、今後10年から20年に3700カ所もの水力発電ダムが稼動開始し、世界中で700ギガワット 以上(米国全土に建設された総発電量の約70%)が追加供給される見込みだ。
もちろん、水力発電所による温室効果ガスの増加は、化石燃料で発電するよりはマシだ。しかし、今後数十年にわたるダムの建設ラッシュは、もともと想定していた温室効果ガスの排出量に大きな影響を及ぼすだろう。ダム作ってもムダだったとは。
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