KADOKAWA Technology Review
×
選挙システムの専門家が語る
エストニア型ネット投票が
導入できない理由
Lyndon French
カバーストーリー Insider Online限定
Hackers are out to jeopardize your vote

選挙システムの専門家が語る
エストニア型ネット投票が
導入できない理由

オンライン投票を導入すべきとの声は日本でも多い。だが、すでに電子投票(投票所に設置した端末を使った投票)を導入している米国では、外国からのサイバー攻撃による選挙結果の操作が現実味を増している。専門家は、むしろ「紙の投票用紙」にも記録を残すべきだという。 by Martin Giles2018.08.23

2016年の大統領選挙では、ロシアのハッカーたちが米国の選挙システムを標的にした。以来、米国は選挙システムの強化に多くの対策を取ってきたが、ミシガン大学コンピューター・セキュリテイ&ソサエティ・センター長のJ・アレックス・ハルダーマン教授によると、米国の選挙システムは依然として脆弱だという(「「選挙結果の改ざん」に現実味、米中間選挙に潜む4つのリスク」参照)。選挙システムの安全性について、MITテクノロジーレビューのサンフランシスコ支局長マーティン・ジャイルズがハルダーマン教授に話を聞いた。ハルダーマン教授は米国やエストニア、インドなど世界中の投票システムを評価し、その内容について米議会で証言している人物である。

——ゲリマンダリング(特定の政党や候補者に有利な選挙区割りをし、その区割りが地理的に異様な場合を指す)から有権者の本人確認の問題まで、米国の選挙制度の正当性を脅かしかねない多くの懸念材料があります。ハッキングはそうした問題と比較してどれほど大きな問題なのでしょうか。

ゲリマンダリングなどは、米国の民主主義のルールに則った、政治的議論の範疇の問題です。一方で我々が問題にしている選挙へのハッキングは、外国の敵対的政府による米国への攻撃です。これは米国政治のルールを逸脱しています。民主主義の根幹を揺るがそうとする動きなのです。

——2016年の米国大統領選挙以来、選挙のセキュリティはどれほど改善されたのでしょうか。

認識という点での改善はありました。ソフトウェアの脆弱性スキャンを実行し、選挙スタッフに連邦政府の脅威情報を受け取れる機密事項取扱い許可を付与するなど、選挙システムの保護に欠かせない第一歩を政府は踏み出しています。3月には不安定な設備のアップグレードなどを目的として、議会が各州に対して新たに合計3億8000万ドルの予算配分を承認したことでその流れは加速しています。しかし、まだまだなすべきことは多く残っています。

——投票のプロセスに関して、最も懸念しているのはどの点ですか?

私が最も懸念しているのは電子投票機です。すべての機械に対して投票用のシステムをプログラミングする必要があり、そのプログラムは選挙関係者がUSBメモリまたはメモリーカードを使ってコピーします。もし誰かのプログラムにマルウェアが感 …

こちらは有料会員限定の記事です。
有料会員になると制限なしにご利用いただけます。
有料会員にはメリットがいっぱい!
  1. 毎月120本以上更新されるオリジナル記事で、人工知能から遺伝子療法まで、先端テクノロジーの最新動向がわかる。
  2. オリジナル記事をテーマ別に再構成したPDFファイル「eムック」を毎月配信。
    重要テーマが押さえられる。
  3. 各分野のキーパーソンを招いたトークイベント、関連セミナーに優待価格でご招待。
人気の記事ランキング
  1. The winners of Innovators under 35 Japan 2024 have been announced MITTRが選ぶ、 日本発U35イノベーター 2024年版
  2. Kids are learning how to make their own little language models 作って学ぶ生成AIモデルの仕組み、MITが子ども向け新アプリ
  3. The race to find new materials with AI needs more data. Meta is giving massive amounts away for free. メタ、材料科学向けの最大規模のデータセットとAIモデルを無償公開
日本発「世界を変える」U35イノベーター

MITテクノロジーレビューが20年以上にわたって開催しているグローバル・アワード「Innovators Under 35 」。2024年受賞者決定!授賞式を11/20に開催します。チケット販売中。 世界的な課題解決に取り組み、向こう数十年間の未来を形作る若きイノベーターの発掘を目的とするアワードの日本版の最新情報を随時発信中。

特集ページへ
MITTRが選んだ 世界を変える10大技術 2024年版

「ブレークスルー・テクノロジー10」は、人工知能、生物工学、気候変動、コンピューティングなどの分野における重要な技術的進歩を評価するMITテクノロジーレビューの年次企画だ。2024年に注目すべき10のテクノロジーを紹介しよう。

特集ページへ
フォローしてください重要なテクノロジーとイノベーションのニュースをSNSやメールで受け取る